唇が背中を滑り降りる感触に、床の上で四つん這いになった獄寺はゾクリと体を震わせた。と、同時に尻の狭間に突き立てられた綱吉の指を、ギリ、と締めつける。
酸素を求めて口を開けると、恥ずかしいくらいに甘ったるい嬌声が洩れだす。
は、は、と息を吐き、吸い込み、綱吉の指の動きを頭の中でただひたすらに追いかける。 潤滑剤に濡れた綱吉の指が動くたびに、グチグチと湿った音がする。
熱を孕んだ下腹部がヒクつくと、その動きにつられるようにしてくわえこんだ指をきつく締めつけた。ペニスの先端がふるりと震え、割れ目の部分が潤んだかと思うと、沸き上がってくる透明な先走りがたらたらと零れ落ちていく。
「あっ、あ……」
抑えられない声を、手で必死に押さえて隠そうとした。
無駄だとわかっているのに、隠さずにはいられない。
「ねえ。なんでこんなに締めつけるんだろうね、獄寺君」
そう言って綱吉は、獄寺の耳に舌先をねじ込む。ピチャ、と湿った音がして、獄寺はゾクリと体を震わせる。
「……っ、ん」
ヒク、と竿が震え、新たな先走りを滴らせる。絨毯の上の染みを指でなぞると、綱吉は微かに笑った。
「もう汚しちゃった?」
尋ねられ、獄寺は恥ずかしさに唇を噛み締める。
羞恥に頬を朱色に染め、伏し目がちに綱吉の視線を避けているところまで、ひとつひとつの仕草を見られているのだと思うと、それだけで体が熱っぽくなってくる。
「どうして欲しい?」
耳元に囁きを吹き込まれ、獄寺はか細い啜り泣きを上げた。
「このまま……」
「このまま?」
はあ、と大きく息をつくと、獄寺は唇を舌でねぶって湿らせた。
「ぁ……このまま、指で…犯して、ください……」
綱吉の舌が、尻の窪みの奥を舐めあげる。
ピチャ、ピチャリと湿った音が聞こえるたびに、獄寺は恥ずかしさに身を捩る。
四つん這いになった手足が震えて、いつ床にへばりついてしまうかもわからないようなみっともない格好のまま、綱吉の舌を、そして体の中に埋められた指を、気持ちいいと思う自分がいた。
「あ……あぁ……──」
唇の端から、涎が顎へと伝い落ちた。
怖いほどに鋭敏になった体は、綱吉の指に、舌に、的確に反応を返す。
「ん……気持ち、い……」
上体を床にぺたりとつける。息が早い。尻を高く突き上げ、後孔が綱吉によく見えるようにしてやる。
「どこが、いい?」
尋ねながら綱吉は、獄寺の前へと手を回す。
勃起してだらだらと先走りを零す性器を手の中にぐっと握りしめ、リズミカルに扱いてくる。
「や、あ、あ……」
もぞもぞと尻を動かす。前を綱吉に握り込まれ、後ろには指が潜り込んでいる。両方の手が不規則な動きを繰り返すと、それだけで獄寺の中で新たな快感が生まれては体の中を勢いよく駆け巡る。 おかしくなりそうだと獄寺は思った。
頭の中が真っ白になって、目の前の景色が遠く滲んでいく。
もっと、と、獄寺は思った。もっと、強く。もっと大きな、熱いものが欲しい。体の中に打ち込まれ、掻き混ぜる楔は、いつももっと太くて硬い。指では足りない。もっと、もっと……。
「中、もっと掻き混ぜてください」
掠れた声で強請ると、綱吉の唇が尻の窪みをペロリと舐めた。
「ひ、ぁ……」
ペニスの先端に集まった熱が、出口を求めて暴れている。
むず痒いような焦れた熱に浮かされるようにして獄寺は、腰を揺らした。
「ココがいい?」
尋ねると同時に綱吉は、潜り込ませた指で内壁をぐいぐいと押してくる。指の腹で内壁を押したかと思うと、中で指を折り曲げて圧迫したり、爪の先でくすぐるような仕草をしたり。
「もっと」と、獄寺は啜り泣いた。
もっと熱をくださいと、無意識のうちに口走る。
綱吉は焦らすようにグチグチと音を立てて内壁を擦り上げ、指の潜り込んだ根本、襞の集まる部分を舌で丁寧に舐め解そうとした。
指が引き抜かれる瞬間の排泄感に、獄寺は大きく体を震わせた。
と、同時に、それまで堪えていた白い飛沫が床をしとどに濡らした。
「あれ、イっちゃった?」
まだ、入れてももらっていないのに。
獄寺はカクカクと首を振り、頷いた。
「気持ち、よすぎて……」
突き出した尻がみっともない。しかしそれがわかっているのに、獄寺は四つん這いの体勢を解くことができないでいる。
じっとして荒い息がおさまるのを待っていると、コロンと体を転がされた。
「足、開いて? 舐めてあげる」
綱吉に言われるがままに床の上で仰向きになって獄寺は、天井を見上げる。
クチュ、と音がした。股間に顔を埋めた綱吉が、獄寺のペニスを口に含んでいた。舌を絡めて竿全体を丁寧に舐めてくれている。
「ん……は、あ……」
ざらりとした感触の舌に嬲られて、獄寺の体はいっそう熱っぽくなっていく。
またしても後孔に指が潜り込もうとした。咄嗟に獄寺はその手を取り、綱吉を見た。
「指じゃないのがいいっス」
指ではなくて。もっと硬くて太くて、熱いものが欲しい。
羨望の眼差しで獄寺は、綱吉の股間へと視線を向ける。綱吉はわずかに苦笑すると伸び上がり、獄寺の唇をペロリと舐めた。
「欲しい?」
尋ねる艶めいた声に、獄寺は体を震わせる。
「……はい」
頷くと、またしても唇にキスがおりてくる。
「焦らさないでください、十代目」
綱吉の腰に手を回して、獄寺は自分の腰を押しつけようとする。
早く、早く……体が、綱吉を欲している。足りない部分を埋めるように、綱吉の一部を取り込み、飲み込んで、搾り取りたいと、獄寺の身体が切望している。
額と鼻の頭とにキスをしてから綱吉は、身体をずらした。
獄寺の足に手をかけると、大きく左右に広げる。
「欲しい?」
また、尋ねられた。
「……早くっ!」
掠れた声で獄寺が口走ると、後孔が収縮した。ヒクン、ヒクン、と蠢いて、綱吉を誘っている。
つぷ、と突き入れられた感触に、獄寺は思わず声をあげて啜り泣いていた。
クチュ、と音がする。
足を大きく左右に開き、後ろ手に床に手をついた獄寺は、口の中に溜まった唾をゴクリと飲み下す。
ゆっくりと、綱吉の性器が自分の中に入り込んでくる。
指と舌とで時間をかけて解された部分は、悩ましげにヒクつきながら綱吉の性器を飲み込んでいく。粘膜の擦れる湿った音は淫猥で恥ずかしかったが、それ以上に獄寺は、この光景に目を奪われていた。
「あ……あ、あ……」
夢中になって腰を動かし、獄寺は与えられる快感を追いかけた。
内壁に与えられる摩擦と律動が、熱と痛みとむず痒いような快感を呼び起こす。自分は目の前にいる男のものなのだと、不意に獄寺は気づいた。
ニヤリと口の端を引きつらせ、獄寺は笑った。
「もっと……奥、です」
片足を、身体のほうへと引き寄せた。ゆっくりと、爪先で綱吉の身体をなぞりながら肩に踵を乗せた。
綱吉が息を飲む気配が、繋がった部分から伝わってくる。
「もっと?」
じっと獄寺の瞳を見つめたまま、綱吉は尋ねる。
「……はい」
挑みかかるように獄寺は相手を睨みつけた。口元に浮かべた笑みは、綱吉を、自分という罠に誘い込むための餌だ。
手を差し伸べ、綱吉の頭を優しく強く抱きしめた。
「動いてください、十代目。ぐちゃぐちゃになるまで、いっぱい突いてください」
掠れた声で耳元に囁きかける。綱吉の口が、なにか言いかけたそのままの形で固まっている。獄寺はペニスの先端に先走りをじわりと滲ませた。
「もっと……熱くしてくださっ……」
言いかけた獄寺の身体を、綱吉はぐい、と床に押しつけた。噛みつくようなキスで獄寺の唇に触れ、舌を絡めた。ジュッ、と音がして、獄寺の舌が痺れるほどきつく吸い上げられる。
「んんっ……」
舌をねぶる綱吉の手が、獄寺の身体を這い回る。乳首をキュッ、と摘み上げられ、獄寺は鼻にかかった声をあげていた。
「ん、はっ……」
うっすらと口を開けて舌を突き出すと、何度も吸い上げられ、舌で愛撫された。背筋がゾクゾクとして、意識しているわけでもないのに、尻の筋肉がキリキリと綱吉の竿を締めつける。
「や……」
首を横に振り、獄寺は呟いた。
綱吉の律動がリズミカルに獄寺を突き上げる。グチュ、と音がした。綱吉の性器が獄寺の肉襞をこじ開け、奥を目指して熱を発している。
「……暑くない?」
綱吉が尋ねると、獄寺は「いいえ」と首を横に振る。
出して、入れて。綱吉の竿が、獄寺の身体を貫き、擦り上げ、ぐちゃぐちゃにしていく。 「あ、ぅあ……」
床に投げ出したほうの獄寺の足が、ピクンと跳ねた。それに気づいた綱吉が、獄寺の足を抱え直し、両足とも自分の肩にかけてしまう。
「苦しくない?」
折り畳むようにして獄寺の身体を二つ折りにし、綱吉は慎重に体重をかけていく。腰を揺さぶられると、深くなった結合部分からなんともいえない痺れるような快感が全身に広がっていく。
「もっと、いっぱいください」
甘えたように獄寺が囁くと、綱吉はキスで応えてくれた。深く唇が合わさり、綱吉が腰を動かし始める。
グチュ、グチュ、と湿った音がしていた。獄寺の性器は反り返り、綱吉の腹に先端を押しつけていた。綱吉が動くたびに、腹にあたった先端が擦られ、次々と先走りが溢れ出してくる。
「ぁ……ふ……」
手を、腹の間へと持っていった。自分で自分の性器を握りしめ、ゆるゆると扱くと腰がビクビクと震えた。
「十代目……」
上擦った声で綱吉を呼ぶと、穏やかな榛色の瞳が獄寺を見下ろしていた。
「もっと?」
尋ねられ、獄寺はコクコクと頷いた。
ペロリと唇を湿らせて綱吉は笑った。穏やかな笑みは人当たりのいい優しげな笑みだが、榛色のその瞳は真っ直ぐに獄寺の心を捕らえて離さない。
「獄寺君も動いて?」
そう言って綱吉は、獄寺の身体がずり上がりそうになるほどの勢いで突き上げ始めた。
「あ、待って……ぁ……」
肩にかけられた足に力を入れて、獄寺は全身で綱吉にしがみついた。しがみつきながらも腹に力を入れると、中に潜り込んだ綱吉の性器をギリ、と締めつけることができる。
「ああ……」
眉をひそめて、綱吉は息を吐き出した。
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