グチュグチュと湿った音を立てながら、獄寺の腰が浮き上がり、すぐにまた降りてくる。 潤滑剤の濡れた音が卑猥だ。
それに、獄寺の腰の動きも。
綱吉の竿を襞の奥深くへ潜り込ませたかと思うと、締めつけながらゆっくりと引きずり出す。時折、ヒクヒクと窄まった部分を震わせ、ひくつかせながらさらにきつく締めつける。
「あ……あっ、ぁ……」
甘い嬌声を上げながら獄寺が首を左右に大きく振ると、彼のペニスがふるふると揺れた。先端からはうっすらと白濁した先走りを零しながら、身を捩らせるところを見ていると、それだけで綱吉の体もいっそう熱く高ぶってくる。
「……気持ちいいよ、獄寺君の中」
擦れた声で綱吉は囁いた。
「言わ…ない、で……くだ…さ……」
恥ずかしそうにうつむく獄寺が愛しくて、綱吉は小さく笑った。
さっき、潤滑剤を取り出すついでに灯りをつけておいてよかったと綱吉は思う。こんなふうに自分の上に跨った獄寺の姿を、しっかりと目に焼きつけることができるのはラッキーだ。
自分も興奮しているが、獄寺もいつになく興奮している。
それもこれもあの忌々しい任務のせいだった。血のにおいと、不快な手応え。あれのせいで自分は興奮している。もしかして獄寺も、そうなのだろうか? 不愉快な任務の記憶を忘れたくて、こんなふうに自分から進んで綱吉を受け入れようとしたのだろうか?
うつむき、固まってしまった獄寺の腰に手をやり、綱吉はやわやわと体を揺さぶった。
獄寺の中がきゅぅぅ、と収縮し、綱吉を締めつけてくる。
「や……あ、っ……!」
グチ、グチ、と湿った音がして、結合部を濡らす潤滑剤が泡立つのが見えた。
「すごい……獄寺君、いやらしい」
ここ──と、綱吉は獄寺の窄まりを指でするりとなぞった。
「ひっ、ぅぅ……」
ブルッと体を震わせた獄寺は、ますます綱吉をきつく締めつける。
「イ…き、たい……」
掠れる声で獄寺は、懇願した。
「十代目、もう……」
声を震わせる獄寺の太股を、綱吉はそろりと手のひらで撫でさする。
「好きに動けばいいよ。見ててあげるから」
優しく宥めるように声をかけると綱吉は、小刻みに下から獄寺を突き上げ始めた。
綱吉の突き上げに合わせて、獄寺が腰を揺らす。
甘い嬌声と、淫猥な水音と、汗と精液のにおいとが部屋に充満している。
獄寺の中はあたたくて、ヌルヌルしていて、気持ちがよかった。綱吉が突き上げると獄寺の内壁は飲み込むように蠕動を繰り返し、抜け出ていく時にはきつく締めつけてくる。
獄寺が前屈みに体を倒すと、綱吉のちょうど目線のあたりにごくでらの胸の位置があった。顔を近づけると、ぷくりと勃起した乳首に鼻先が擦れた。
「っ、や……」
身を離そうとする獄寺の背中に片腕を回した綱吉は、よく熟れて赤くなった乳首にむしゃぶりついていく。
チュウ、と音を立てて乳首を吸うと、獄寺の内壁がぎゅうぎゅうと綱吉を締めつけた。
「動いて、獄寺君。もっと動けるだろ?」
言いながら綱吉の手は、わんやりとと獄寺の陰毛を引っ張る。
「ん、んんっ……」
押し殺した獄寺の声に、綱吉の背筋がゾクゾクとする。声をあげさせたい、もう少しだけ苛めてみたい、そんな暗い感情がフツフツと胸の底からこみ上げてきては、すぐに消えていった。
苛めるよりも、可愛がってよがらせて声をあげさせるほうがいいに決まっている。少し恥ずかしそうに目元を朱色に染めた獄寺の瞳が綱吉は気に入っている。あの目で見つめられるのが、たまらなく心地いい。
「……ぅ……ごけ、な……」
掠れる声で訴えた獄寺は、じれったそうに腰を捩っている。大きな動きではないものの、だからこそもどかしそうな動きのひとつひとつが卑猥に見える。締めつけ、さらに奥へと飲み込もうとする貪欲な動きが愛しくて、綱吉は下からぐい、と大きく腰を突き上げた。
「ひぁっ……あ……!」
綱吉の背中に回した獄寺の手が、きつく縋りついてくる。
腕の中にいる恋人を大切にしたいと思いながらも、今夜は任務のせいだろうか、綱吉の気持ちはコロコロと変化する。
やはりあの任務はよくなかった。
絶対に血のにおいのせいだと綱吉は思う。
苛々して、その不安定な気持ちのまま、思うまま下から獄寺を揺さぶった。もう無理だと、ぐったりとして懇願するのも聞き入れず、散々したい放題した。
それでも獄寺が綱吉を許してくれるのはわかっている。だから安心して綱吉は、獄寺を好き勝手に抱くことができるのだ。
「ごめんね、獄寺君」
耳の中に、吐息と一緒に囁きを吹き込む。
悪いとは思っている。自制のきかない気持ちを持て余しての行動だということなど、聡い獄寺はとっくにわかっているはずだ。こんなふうにして謝るくらいなら、最初から抱かなければよかったのかもしれない。だけど、止まらない。
気持ちも。体も。
いつもより乱暴に腰を突き上げ、獄寺を散々啼かせて最後に吐き出させた。二人の腹の間で硬くなっていた獄寺のペニスは、ほっそりとした陰茎を震わせながら白濁したものを放った。
綱吉もすぐに達した。獄寺の中に注ぎ込みながら強く擦り上げると、内壁はキュウキュウと綱吉の竿を締めつけてきた。
気持ちいいのと、ホッとしたのとで、綱吉は獄寺の体を抱えたままぐったりとベッドに沈み込んだ。
今度は深く眠れそうな気がした。
目が覚めると朝だった。
寝起きでぼんやりとしていた綱吉の頭が、少しずつはっきりとしてくる。
腕の中の獄寺は、疲れているのだろう、よく眠っている。夕べはいつも以上に無理をさせてしまったかもしれない。目が覚めたらちゃんと謝ろうと思いながらも綱吉は、穏やかな寝息を立てる獄寺のこめみに唇をそっと押し当てた。
それから獄寺の体を抱きしめ直し、首筋に鼻先を寄せていく。
反省しなければと思う。任務の後味の悪さを払拭するために獄寺を利用するようにして抱いてしまったことは、あまり褒められたことではない。獄寺は気にするなときっと笑って言ってくれるだろうが、綱吉の気持ちがそれではすまない。
獄寺は恋人であって、自分が任務のことで八つ当たりをしたり我が儘を言ったりしていい相手ではない。互いの立場はあくまでも対等であるべきだ。
二人だけの時は、気持ちを切り替えなければ。
任務での出来事が後を引かないように、もっとしっかりしなければと綱吉は思う。
「……ごめんね、獄寺君」
呟いて綱吉は、獄寺の体に回した腕にそっと力を込める。
この次はこんなことのないようにしなければ。もっと気持ちを強く持って、感情のままに獄寺を抱いたりしないように……そんなことを思っているうちに、綱吉は二度寝の世界へ沈んでいく。
「獄寺君……好、き…だよ……」
むにゃむにゃと呟いた言葉に、腕の中の獄寺がパチリと目を開けたことなど、綱吉は気づきもしなかった。
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