『恋をした日』



  サンジの手は、ゾロの下着の中に易々と入り込んできた。
  男に触られたことなどついぞなかった部分を、ゾロは初めて触られた。
「ぁ……んんっ……」
  膝を閉じようとしても、サンジの膝に阻まれてしまう。それならばと、サンジの手の動きを封じようとした途端、ギュッ、とペニスを握り締められた。
「ひっ……」
  体を大きく震わせ、ゾロはサンジにしがみついた。
「いい子にしてな」
  耳元で囁かれ、ゾロは背筋がゾクゾクとなった。しがみついたままコクコクと頷くと、サンジの手は力を抜き、ゆるゆると竿の部分を扱き始める。
  サンジの手は、これまでゾロがこういった行為をしたことのある女よりも体温が低かった。繊細な指遣いで追い上げられ、あっという間に先走りが溢れ出すと、ゾロは立っていられなくなった。
「ダ……ダメだ……」
  サンジの腕にしがみついたまま、ゾロはズルズルと甲板に座り込んだ。
  なおもサンジの手が、ゾロを追い上げてくる。ゆっくりと竿の裏をなぞりあげ、鈴口の部分を指の腹でぐるりとなぞる。滲み出た精液を指で掬い取ると、サンジはそれをペロリと舐めた。
「なっ……あ……」
  声にならない声をあげたゾロは、なんとかして後退ろうとする。
「なんだ、お前、舐めてもらったことないのか?」
  あるにはあるが、相手は商売女だった。そういうものだと思っていた。しかしサンジは違う。奇妙なものでも見るような眼差しで、ゾロはサンジの口元をじっと見つめる。
「お前の味がする」
  そう言ってサンジは、ゾロに口づけた。
「んっ、ぅ……」
  青臭い精液のにおいがゾロの口の中に広がる。サンジの舌についた精液が、口移しにゾロの口の中に渡されたのだ。
「んんっ!」
  四肢を突っ張ってサンジから逃れようとすると、今度は足首を掴まれた。
  ぐい、と足を上にあげられ、大股開きに足を開かされた。
  ゾロのペニスはヒクヒクと蠢いていた。溢れ続ける先走りは陰毛を濡らし、月明かりでわずかに反射している。
  ゾロは、恥ずかしさに足を閉じようとした。



「逃げたくなるほど嫌なのか?」
  サンジが尋ねる。
  ゾロは首を横に振った。
  嫌ではない。ここまでされても、ゾロは、サンジに触られるのが嫌ではなかった。
  嫌ではないということは、きっと、好きなのだろう。
  ゾロは、じっとサンジの顔を見つめた。端正な横顔。すらりとしたきれいな形の鼻。眉毛が巻いているのは、あれは、何だろうか。しかしその眉毛ですらサンジらしいと思えて、ゾロは小さく笑う。
「なんで、嫌じゃないんだろな」
  しばらくして、少し困ったようにゾロが呟いた。
  その言い回しが年よりも幼く見えて、サンジはゾロの頭をぎゅっと抱き寄せた。
「好きだからだろ。いい加減、認めてしまえよ」
  サンジの声が耳元で低く響いて、ゾロは小さく首を傾げた。
  ──好き?
  好きなんだろうと、ゾロの心の中で、もう一人の自分が問いかける。サンジのことが好きなら、さっさと自分の気持ちに正直になれと、自分自身に指をつきつけられた。
  本当に自分は、サンジのことが好きなのだろうか。
  何度問うても、答えはいつも同じだ。好きなんだろう?と、自分の中の心の声は返してくるばかり。
  ゾロは躊躇いながらもサンジの背に腕を回した。それが自然なことのように、ゾロには思えた。



  サンジの髪を握り締めて、ゾロは絶頂を迎えた。
  滑らかな舌と、優しい唇とに、ゾロのペニスは愛撫された。サンジがくすぐるように亀頭のあたりを音を立てて舐め回すと、ゾロの腰はビクビクと震えた。
  竿に軽く歯を立てるとサンジは、そっとゾロのペニスを扱いてやった。
「っ……」
  声をあげるのをこらえるゾロは、艶めかしかった。
  ゆっくりと時間が過ぎればいいのにと、サンジは散々ゾロを焦らした。玉袋をやわやわと揉みしだき、溢れる精液を舌先で掬い取る。時間をかけてゾロの体がぐったりしたところで先端を唇で挟んでやると、ゾロのペニスは呆気なく爆ぜた。サンジは音を立てて、最後の一滴までゾロの残滓を舐め取った。
  息も絶え絶えのゾロが快感の波に酔っているうちにと、サンジはゾロの体をくるりとひっくり返して腰を突き出させる。サンジの腰の高ぶりは、限界を感じるほどに硬くなっていた。
「挿れてもいいか?」
  サンジが尋ねると、ぼんやりとした頭でゾロは頷いていた。察するに、きっと何を尋ねられたかもわかっていないのだろう。
  サンジは少しばかりの罪の意識を感じながら、ゾロの尻に指を這わせた。
  ずり落ちかけていたボトムを下着ごとおろすと、まず太股に唇を寄せる。
「後ろの経験は?」
  尻の穴のあたりを指でぐにぐにと押しながらサンジが問うと、ゾロはビクン、と体を震わせた。
「ココは……」
  と、サンジはゾロの尻の挾間に顔を寄せ、穴の周辺に舌を這わせる。
「あっ……っ……」
  チュウ、と穴の襞を吸い上げ、サンジは小さく笑った。
「触られるのは、嫌か?」
  尋ねながらも指を襞の皺に添わせて内側へとめり込ませていく。
「っ……くぅ……」
  肉襞は柔らかかった。サンジは指をぐいぐいと押し込んだ。痛いと言葉にしなかったものの、ゾロは痛みを堪えているようだった。少しでも痛みが和らぐようにサンジは、挿入部を舐めてやった。



  サンジは背後からゾロのペニスに手を回した。
  前と後ろとを同時に愛撫してやると、ゾロは腰を揺らめかせ、掠れる声で啜り泣いた。
「……サ……」
  それでも嫌と言わないのは、ゾロが強情だからか、それとも本心からサンジを欲しているからなのか。
  サンジはゆっくりと指を引きずり出すと、今にも爆ぜてしまいそうな自分のペニスをゾロの臀部に押し付けた。
「ぁ……」
  先走りをなすりつけながらペニスを擦りつけると、ヌチャヌチャと音がした。卑猥な光景だなと思いながら、そんな格好をゾロにさせているのは自分なのだと、サンジは苦笑した。
「挿れるぞ?」
  サンジが言うと、ゾロは背をそり返させ、尻をぐい、とサンジの方へと押し付けた。
  嫌ではないと言うゾロの気持ちは、本心なのだろう。サンジはそろそろとペニスを挿入した。
  ズブズブとゾロの中に自分のものが埋もれていく。
  弾力のある内壁はサンジを包み込み、奥へ奥へと飲み込もうとする。
「んっ……あっっ……」
  カクン、と、四つん這いになっていたゾロの肘が折れ、上体が床板に沈む。
  サンジは、自分のペニスがゾロの中を出入りする様子を眺めながら、腰を強く打ちつけた。
「ひぁ…う……あ、あ……」
  規則的なサンジの腰の動きに、ゾロの口の端から涎が滴り落ちた。
「あ、あ、あ……」
  肉と肉とがぶつかり合う音と、精液の青臭いにおいがあたりに漂いだす。
  サンジがゾロの前に手を回すと、ゾロは呆気なく射精した。
「あ、俺も……」
  ゾロの射精に促されるようにして、サンジもイった。締め付けられる感覚はこれまでにないほどの強い快感で、サンジは頭の中が真っ白にスパークするのを感じた。



「──それで、嫌だったか?」
  真夜中の潮風に吹かれて、サンジが尋ねる。
  ゾロは首を横に振ると、サンジの唇にそっと自分の唇を重ねた。
「嫌じゃ、なかった」
  好きと言うには照れがあるから、精一杯の虚勢を張って、ゾロはサンジに返した。





END
(2007.8.29)



             

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