『残り香 2』



  下着ごとゾロのズボンが引きずりおろされる。
  やや乱暴に腰を掴まれ、サンジの方へと引き寄せられた。
  いつも以上にがっついているなと思いながらもゾロは板張りの壁に両手をつき、尻をサンジの方へと心持ち突き出した。
「さっさと済ませろよ」
  言外に、不本意なのだと含ませながら、ゾロ。
  すぐにサンジの高ぶりが押し付けられた。張り詰めて固くなったものの先端からは既に粘っこいものが溢れだしており、ゾロの尻の狭間を行きつ戻りつするたびにくちゅくちゅと音がしている。
  男同士だというのにお互い何故、こんなにも反応してしまうのだろうか。
  ぼんやりとしていると、サンジの唇が脊椎に沿って背中をおりてくるところだった。軽く唇で撫でながら、そろり、そろりとおりてくる。
「ぁ……」
  壁についたゾロの腕が、微かに震える。
「んぁっ……」
  不意に、サンジの指がゾロの窪みを捉えた。先ほどなすりつけた自身のもので周囲を湿らせてから、サンジは指をくい、と突き入れた。
  ぎり、とゾロの指が板張りの壁を掻きむしった。
  唇を噛み締め、声が洩れないように力を込める。それを見越してか、サンジはわざとその部分を舌で舐め上げる。
  ぴちゃ、ぴちゃ、と水音がして、唾液がゾロの後ろを湿らせていく。時折、指の隙間からゾロの中へと舌を差し込み、サンジは悪戯を仕掛けた。



「う……あ…くっっ……」
  かくかくと震える膝に力を入れると、サンジの舌がぬるりと内壁を圧迫し、蠢いた。
「すげぇな、ここ」
  サンジがずる、と舌を引き抜くと、抜け出たものに追い縋ろうとゾロの窄まりがひくひくとなった。サンジの唾液ですっかり濡れそぼったそこは、まるで女の穴のように誘っている。
  ゾロは腰をさらにサンジのほうへと突き出した。
「……見てねぇでさっさと挿れろ、クソ野郎」
  言いながらもゾロは片手を後ろへ回すと、尻に手をかける。
「ここに……挿れたいんだろう? 俺のケツん中に突っ込んで、揺さぶり回して、ぐちゃぐちゃにしたいんだろ?」
  掠れた声で言った瞬間、サンジの手ががしりとゾロの腰を掴んだ。
「挿れてぇ……」
  苦しそうに言い捨てると、サンジはゾロの窄まりへと自身を深く突き立てた。
「ひっ……!」
  ゾロの喉が鳴った。



  サンジが腰を動かすたびに、二人の身体が密着する。
  汗ばんだ身体からは青臭いにおいが立ち上り、そこにサンジの煙草の香りが微かに入り交じっていた。
「あっ、あぁ……」
  なだらかな子宮の稜線もなく、ただまっすぐなだけの暗く深い穴を、サンジのものが出入りしている。
  男同士なのにと思いながらもゾロは、流されていく。快楽に。そして持て余し気味の自分の感情に。
「中に出してもいいか?」
  サンジが尋ねると、ゾロは首を横に振った。
「断る……てめぇの都合で、勝手されてたまるか──」
  鼻でせせら笑い、ゾロはサンジの手を取った。その手を股間へと導くと、重ね合った手の上から自分のものを扱き始める。
  犯されているのだとは思いたくなかった。女のようにただ抱かれるだけというのもお断りだ。自分が抱いているのだと思いたい。相手を犯しているような気持ちで、抱かれたかったのだ。
「お前の望むとおりに抱いてやるよ」
  うなじに唇を這わせながら、サンジは囁いた。
  自分が心の中で思っていたことを読まれたような気がして、その瞬間、ゾロはビクン、と身体を震わせた。



  追いつめられていく。
  ゆっくりと、ゆっくりと。
  ゾロは唇の端から苦しそうな喘ぎを洩らしながら、壁板にしがみついていた。
「もっと……もっと、奥まで……」
  口早に呟くときつく目を閉じ、後ろからサンジに突いてもらう。
  甘美な夢に終わりはなかった。
  口では、素振りでは、嫌がっているように見せかけながらもゾロは、次から次へとサンジの前に身体を開いていく。素直なやり方じゃないなと思いながらも、やめられない。
  サンジの愛撫に酔いしれていると、ぎゅっ、と股間のものを力任せに握られた。
「ほら、もっといい声で鳴いてみろよ」
  咄嗟にゾロは、啜り泣くような苦しげな吐息を洩らしていた。
「その声……」
  うっとりと、サンジが呟く。
「その声が聞きたかったんだ…──」
  ヒクン、とゾロの中でサンジが身震いをした。火傷しそうなほど熱いそれは固く、先端の括れが容赦なく内壁を擦り上げていく。
「はっ…ぁ……」
  揺さぶられているうちに、ゾロの身体の中心が青々しい香りを放ちだす。ポタリ、ポタリ、と先走りの滴が床へと転がり落ちると、サンジの動きが性急になってきた。
「あぁ……」
  掠れて欲情したサンジの吐息が、ゾロのうなじにかかる。
  壁を引っ掻いていたゾロの手を取るとサンジは、自分の口元へと持っていった。節くれ立った甲に唇を押し当てると、しっかりと指を絡める。
  それからぐい、と大きくゾロの中を突き上げた。






── to be continued ──
(H15.9.12)



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