Flash Point 2

  背の高い木々か密生する林に入ると、途端、ゾロの背を汗が伝いだした。
  何やらよくわからないのだが、背筋がゾクゾクした。
「おい……調子でも悪いのか?」
  からかいを含んだ調子で、サンジが尋ねる。
「いや、別に」
  そう答えたものの、ゾロは胃のむかつきを感じていた。おかしい。こんなことは初めてだ。頭の中が、次第にぼーっとしてくる。
  それでも、何とか気力を振り絞ってゾロは歩いていく。足下に転がる木々の枝葉を踏みつけて、一歩、また一歩とサンジの後を追って歩いていく。
  しばらく歩いたところでサンジが立ち止まった。
  視界が霞んですぐ前のものにすら気付かなくなっていたゾロは、サンジの背中に勢いよくぶつかっていった。
「おっと……」
  振り返ったサンジが慌てて、よろつくゾロの身体を引き寄せる。
「調子が悪いんだろう?」
  何もかもを見透かしたようなサンジの眼差しが、剣呑に細められる。
  嫌な感じだと、ゾロはこっそりと心の中で思った。



「……もう、大丈夫だ」
  そう言うとゾロは、サンジの腕の中から抜け出そうとした。
  まだ気分はよくなかったが、このままじっとサンジと密着しているのも何となく気まずいような感じがしたのだ。
  腕を突っぱねてサンジの胸を押し返すと、耳元に生暖かい息を吹きかけられた。
「本当に?」
  疑うように、サンジがゾロの顔を覗き込んでくる。
  サンジの繊細な指先が、ゾロの腕をがっしりと掴んだ。それから、ゾロの手首にゆっくりと唇を押し当て、舌先でくすぐるようにして、ペロリと舐める。
「──…んっっ……!」
  不意に、思いがけない声が洩れた。甘えるような、低い声だ。ゾロ自身、自分にこんな声を出すことができるとは思ってもいなかったほどだ。
「なんだ、もう感じてるのか?」
  言いながらサンジは、ゾロの手首にちゅ、と音を立ててキスをした。
  ゾロの身体が、ビクン、と震えた。いつもならこんなことはないのだ。明らかに妙だった。こんなにも自分の身体が言うことを聞いてくれないといったことは、今までになかったことだ。
「大丈夫だ、すぐによくなる」
  そう言うとサンジは、ゆっくりとゾロの身体をまさぐり始めた。



  宥めるようなサンジのキスが、ゾロの頭の中を不明瞭にしていく。まるで靄がかかってしまったような、そんな感じがする。
「あ……あっ……」
  ゾロの胸の突起を、サンジの指が軽く弾いた。きゅっ、とつまみ上げ、それから親指の腹で何度も嬲られると、ゾロの乳首は痛いほどに勃起する。シャツの中に頭をつっこみ、サンジはゾロの腹を舌でなぞった。弾力のある引き締まった腹筋、胸の大傷、それから乳首。舌が行きつ戻りつしながらゾロの弱いところを舐めあげ、歯で軽く甘噛みする。
「んっ、ん……ぁ……」
  首を左右に振りながら、ゾロは唇を噛み締めた。
  ほんの少し触れられただけでも、身体がどうにかなってしまいそうだった。股間のものは衣服の下ですでに勃起しており、先端には甘い蜜が滲み始めている。サンジの舌の動きに合わせて、ゾロの腰はついつい、揺らいでしまう。
「なあ、もうこんなになってる」
  クスクスと笑いながらサンジが、ゾロの股間の高ぶりに触れてきた。布越しにもはっきりとわかる質感のものをサンジが乱暴に片手で掴み、咄嗟にゾロは小さく呻いた。
  このまま流されていくのだろうかと、ゾロはぼんやりと思う。
  身体の熱はどんどん一点に集まってきている。この熱を何とかしなければならないのも事実だったが、先ほどからの気分の悪さが薄れてきているのもまた事実だった。
「は……ぁ……んんっ」
  ぐい、とゾロの下衣が引きずり下ろされた。今の今まで下着の中に押し込められていたペニスがプルン、と大きく揺らぎ、天を向く。
「いい子だ」
  気付くと、サンジの声が、ゾロの耳元でしていた。



  大木の幹に身体を押しつけられ、ゾロは指の力だけで必死に幹にしがみついていた。
  サンジの唇が、裸にされたゾロの下半身に押し当てられた。亀頭の割れ目に舌先をねじ込み、ぐりぐりと滲み出る精液を舐め取っていく。腰を引こうとしたゾロは、気が変わったのかサンジの肩に片手を置き、自身の体重を支えた。サンジの口が、ゾロの竿をくわえ込む。舌が動き、口の中でぴちゃぴちゃと卑猥な音がしている。
「ぁ……あっ、あっ、」
  口に含みきれなかったぶんは指で、玉袋ごと揉みしだいてやる。サンジの白い指が踊るのにあわせて、ゾロの腰が頼りなく揺れている。
「……出せよ。飲んでやる」
  そう言うとサンジは、口の端を窄めて竿を締め付けながら、ゆっくりと顔を動かした。
「やめろ……」
  弱々しくゾロは告げた。しかし言葉とは裏腹に、ゾロの身体はサンジを受け入れたがっている。今すぐにでも、身体の奥深くに侵入してほしいと思っている。もっとも、それが本心からなのかどうかはわからなかったが。
  サンジの口の端から、唾液とも精液とも判別のつかない、濁った液体がたらりと滴り落ちた。ゾロは、自分のペニスがサンジの口の中に飲み込まれてはまた出てくるのをじっと見ていた。だらしなく半開きになったゾロの口の端からも、唾液が垂れている。
  この行為をやめさせたいのか、それとも続けたいのかもわからずにゾロは、サンジの肩に置いた手にぐい、と力を入れた。
「あ……」
  大きく首を横に振り、ゾロは荒い息を吐いた。
「やめっ……やめ…る、な……」



to be continued
(H16.6.17)



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