Flash Point 3

  ドクン、と身体の中の血液が大きく脈打つ。
  サンジの口の中に勢いよく、ゾロの精液が叩き付けられた。甘酸っぱいような、青臭いような何とも言えない味がしている。
  喉を鳴らしてサンジは、精液を飲み干していく。丹念に舌で竿の裏やくびれの部分に残る精液を舐め清めた。
「少しは落ち着いたか?」
  上目遣いにゾロを見上げると、にやりと笑ってサンジは尋ねかけた。
  ゾロはまだ息が整わないようで、肩が大きく上下している。
  立ち上がり、サンジはゾロの唇を軽く吸った。ゾロの口の中に、唾液と一緒にたった今舐め取ったばかりの精液をも流し込んでやると、途端にゾロはしかめっ面になってサンジを睨み付けてきた。
「自分のを飲む、ってぇのは、どんな気分だ?」
  からかうように、サンジは訊いた。



  ゾロの呼吸が整うのを待って、サンジはその傷ひとつない背に唇を寄せた。
  肩胛骨の下のあたりを軽く舐めると、ゾロは戸惑うように小さく身じろぎをする。
「あんまり時間はかけるなよ」
  と、ゾロ。
  その言葉を聞きながらもサンジの唇は焦らすようにゾロの腰へと降り、尻の狭間に触れてくる。
  サンジは、ゾロに、木の幹に手をついてこちら側へ尻をつき出すような格好をさせた。最初は恥じらうように逃げを打っていたゾロだったが、サンジの手が双丘にかかり、左右に大きく割り開くととうとう観念したのか、下を向いてじっと堪えていた。サンジの唇が尻の丘を滑り降り、舌先が菊門の入り口をちろちろと舐めると、ゾロの身体には自然と震えが走った。
「んっ……」
  ぎり、とゾロの指が、木の幹をかきむしる。
  サンジの舌はぬぷりとゾロの中に潜り込み、内壁を舐め上げた。
  二人とも、相手の行為に夢中だった。
  陸からの風が木々を揺らすと、青々と茂る若葉の隙間から青い空と海とが見え隠れした。
「……ふっ……ぁ……」
  サンジの手が、するりとゾロの股間に回された。後孔とペニスを同時に愛撫され、ゾロの背が大きくしなった。
  堰を切ったように溢れだしたゾロの精液が、サンジの手を、汚していく──



  挿入の瞬間、ゾロは空を見上げていた。
  限界まで背を反らし、痛みからではない声をあげた。
  ずるり、とサンジのペニスが入り込んでくるその感触に、ざわざわと鳥肌が立つ。
  微かな痛みに、自分は男なのだと思い知らされた。が、同時に、自分と同じ男のサンジが、自分とセックスをしたいと思っていることに対して言いようのない優越感を感じていた。
「ああぁ……」
  声をあげ、木の幹にしっかりと捕まってゾロは、イった。
  締め付けがきつくなったのを機に、サンジは腰の動きを早めていく。内壁の奥のほうを擦り上げるようにすると、ゾロは低く掠れた声で呻いた。その声が耳に届くだけで、サンジの脳内にアドレナリンがどっと流れ出す。自分と同じ男の声なのにと、自嘲気味にサンジは思った。
  結合部からサンジの先走りの液が洩れ出してきて、乳白色の筋がゾロの太腿に何本もの道を作っていく。
「早く……早く、出せ」
  ゾロが言う。
  腰をスライドさせながら、サンジは喉を鳴らした。ゾロの尻からペニスを引きずり出して外で射精するか、それとも入り口近くに射精して内股にてらてらと光る汁の道を作るかどうしようかと考えながら突き上げる。すがりつくような内壁の締め付けに、サンジは自分の限界が近いことを知った。
  ゾロの腰に手を添え、サンジは力任せに腰を打ち付けていく。
  陰毛がすれて、痛い。ちりちりとした感触にサンジは眉間に皺を寄せた。
「イくぞ……いいか? 中に出してもいいか? 出すぞ?」
  サンジの言葉に、ゾロは首を縦に振ってこたえた。



  たらたらと、中にぶちまけられた精液が溢れ出てくる。
  不快感に顔をしかめながらゾロは、サンジを睨み付けた。
「中に出すんじゃなかったのか?」
  あからさまにそう尋ねられ、サンジは決まり悪そうに苦笑した。
「や、最後の最後で抜けちまってな」
  そう返しながらもサンジは、身支度を整えるのに余念がない。何やら決まり悪そうな顔をしているのも気になるところだ。
「それで……どうだったんだ? よかったのか、お前は」
  ゾロが尋ねると、サンジは少し驚いたような顔をした。
「……ああ?」
  シャツのボタンをはめる手を止め、サンジはまじまじとゾロの顔を凝視した。わかっているのかいないのか、ゾロは、生真面目そうな面もちでじっとサンジを見つめている。
  意味深な眼差しでじっくりとサンジを見つめてからゾロは、ふっ、と視線を逸らした。その口元には、微かな笑みが浮かんでいる。
  それからゾロは自分も身繕いを整えると、先に用意の整っていたサンジのすぐ目の前を横切り、歩き出した。通り過ぎる瞬間、ゾロはサンジの肩をポン、と軽く叩いた。
「──…で、一服盛った効果はどうだった?」
  ぽそりとゾロが尋ねると、サンジは凍り付いたようにその場を動くことが出来なくなってしまった。ゾロの言葉に、心当たりがあったからだ。
  あんぐりと、顎が外れそうなほど大きく口を開けたサンジを尻目に、ゾロは元来た道とおぼしき道を、歩き始める。
  リゾー島のバカンスは、まだまだ始まったばかりだった。



END
(H16.6.18)



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