黒子の窄まった部分に黄瀬の指がピタリと押し当てられた。
恐る恐るといった様子で黄瀬の指が窄まった襞の縁をなぞり、ゆっくりと肉の間に埋め込まれていく。
丁寧に整えられた黄瀬の指先は、するりと黒子の中へと潜り込んだ。襞を押し広げ、時折、優しく指の腹で内壁を押し返す。その感触に黒子は、もどかしそうに腰を揺らめかせた。
「あっ、あ……」
クチュン、と水音がした。恥ずかしいと思う間もなく、黄瀬の指がぐりぐりと内壁を擦り上げる。
「は、あ……っ!」
ソファの背もたれにかけた足がカクカクと揺れる。
黄瀬の肩に担ぎ上げられた足に力を込めると、指がズルリと抜け出ていく。こみ上げてくる排泄感に顔をしかめながらも黒子は、腰を揺らめかせた。
「……気持ちいっスか?」
心配そうに尋ねてくる顔が、愛しい。黄瀬の首の後ろに腕を回すと、黒子はぐい、自分のほうへと引き寄せる。
「もっと……」
唇をペロリと舐め、男の劣情を煽ってやる。
「もっと、中…触ってください」
火神とは違う男のにおいを、黒子は感じ取る。
黄瀬はきっと、自分を大切に抱いてくれるだろう。大切に扱われてすぎて、こちらがもどかしくなるぐらいに……。
「じゃ…あ……」
躊躇いがちに黄瀬の指が、今引き抜いたばかりの中心へと埋められていく。ぬぷっ、と湿った音がする。
「ぁ……ん……」
黒子の背筋を、ビリビリと痺れるようなものが流れていく。火神とセックスをする時にも感じることはあるが、あれとはまた異なるような気もする。
黒子の後ろをやわやわと解しながら、黄瀬の唇は鎖骨のあたりから胸へとかけてをさまよっている。チュ、チュ、と音を立てて肌を吸い上げられると、そのたびに黒子の体がビクリと震える。
「ん、ぁ……」
気持ちいい。気持ちよくて、どうにかしてほしいのに、それでも黄瀬はやんわりとしか愛撫を与えてくれない。比べるのはよくないとわかっているが、火神とは違う。触れ方ひとつにしても、そうだ。
「っ……黄瀬君、もっと……」
もっと強く中を擦って欲しい。肌をきつく吸い上げて、痕を残して欲しい。所有される喜びを黒子は既に知っている。躊躇わずに、もっと直接的な抱き方をして欲しいのに。
焦らすように唇が肌をなぞり、ゆっくりと黒子の下肢へとたどり着く。淡い陰毛に唇で触れてから、ようやく陰茎に触れてもらえる。節くれだった指でやんわりと竿をなぞられると、甘い声が洩れた。
ぐちぐちと湿った音を立てているのは、後ろに潜り込んだ指が立てる音だろうか、それとも竿を含んだ黄瀬の口が立てる音だろうか。
「あ……あぁっ……」
背を反らし、声を上げた。黄瀬の肩にかけられた足がカクカクと揺れているのがどこかしらいやらしく見える。
「すご……中も外もドロドロっスよ、黒子っち」
「や……言わないでください……」
思わず目を閉じた瞬間、別の男の気配を感じて黒子は目を開けた。
ソファの向こう側から覗き込んでくるのは、火神だ。腰にタオルを巻いただけの男は、のんびりと手にしたスポーツドリンクをあおり飲んでから、再び黒子の顔を覗きこんでくる。
「なんだよ、二人だけで先におっぱじめやがって」
少しだけ不機嫌そうな顔が、子どもっぽく見える。体は大きくても、こんな表情をする火神が好きだ。黒子は二人に気付かれないようにこっそりと、微かに笑った。
「火神っち……俺、初めてなんスよ、今夜が。今夜は俺に譲ってください」
ムッとしたように黄瀬が言うと、張り合うように火神もムッと口を尖らせた。
「チッ……じゃあ、おめーらがウマくヤれるかどうか、最後まで見ててやるよ」
売り言葉に買い言葉で、そう返したのは火神だ。
おもむろに黒子の上体を膝に抱え上げると、さっとソファに座り込んでしまう。
「ちょっ、何やってるんスか、火神っち!」
黒子を取られてなるものかと慌てて声を荒げる黄瀬に、火神はふてぶてしい笑みを向けた。
「だから、ちゃんとデキんのかどーか、見ててやるって言ってるんだろ」
近すぎると黒子は思う。黄瀬だってきっと同じことを思っているだろう。こんなに間近で見られるのは、たまらなく恥ずかしい。
「ほら、お前もいい声聞かせてやれよ、黄瀬に」
そう言うと火神は、黒子の乳首に指を這わせた。きゅっ、と摘み上げ、指の腹で転がされると、痺れるような痛みと快感が、乳首から黒子の体の中を走って手足の先まで流れていく。
「あっ……んんっ!」
思わず黒子が腰を揺らすと、中に潜り込んでいた黄瀬の指を締め付けてしまう。
「や、あ……」
上半身に与えられる強い刺激と、下半身に与えられるもどかしいような緩やかな愛撫と。どちらにも感じてしまう。
「黄、瀬…君……」
手を伸ばして、黄瀬を呼ぶ。
貫かれたい。黄瀬の股間の高ぶりに、手を伸ばして黒子はそっと触れてみた。先走りが滲んでいたのか、触れたところがヌルヌルとする。
「も、いいから……入れてください……」
先に体を繋げた相手は火神だが、だからこそ今日から三人で暮らすこの部屋では、黄瀬に抱かれたいと黒子は思う。どちらの相手とも平等に、初めてを体験したい。
「早く……っ」
ズルリと黄瀬の指が抜け出ていくと、かわりに硬くて太いものが窄まりの中心にあてがわれた。
「へぇ。なかなかいい光景だな」
からかうように火神が口を挟んでくる。
「コイツ、力任せに突き上げられんの好きなんだぜ」
中をぐちゃぐちゃに掻き混ぜて、擦り上げて……きつく胸の先に噛み付かれて。それで黒子は何度イかされただろう。火神とのセックスは気持ちはいいが乱暴で、どちらかというと黒子が体力を消耗するばかりの一方的なものが多かった。
だが、黄瀬はどうだろう?
「黄瀬君……!」
切羽詰ったような声をあげると、じりじりと黄瀬が腰を進めてくるのが感じられる。
ズブズブと押し込まれ、広げられていく感覚に黒子の背筋がゾクゾクとなる。
「あぁ……あ……」
背を反らそうとすると、後頭部に何かが触れる。火神の股間で高ぶっているものが、バスタオルを押し上げ、黒子の頭にあたっているのだ。
「んっ…ぁ……」
手を伸ばして、バスタオルの上からか高ぶりに触れた。
さするように高ぶりをなぞると、ますます硬くなっていくのが感じられる。
「なんだお前、両方欲しいのか」
火神が口元に浮かべた笑みはいやらしかった。思わせぶりにペロリと自分の唇を舐める仕草に、黒子は喉の渇きを覚えた。
黄瀬のものが黒子の中にすべて納められると、内臓が競り上がってくるような感じがした。大きい。火神のものも大きいが、黄瀬のものも同じぐらい大きい。
「……黄瀬…君」
名前を呼んで、片腕を伸ばして黄瀬の体を引き寄せる。
「やっと、ひとつになれたっスね、黒子っち」
嬉しそうに微笑んで、黄瀬は黒子の唇にキスを落とした。
チュ、と音を立てて唇を吸われると、めまいがした。もぐりこんだ黄瀬のペニスを、無意識のうちに内部が締め付けようとするのが恥ずかしくもある。
「すご……黒子っちの中、ヒクついてるっスよ」
掠れた声で黄瀬が告げてくる。
「きゅうきゅう締め付けて、このまま離してもらえなくなりそう……」
あまりにも嬉しそうに言ってくるものだから、黒子は顔を背けて「馬鹿」とだけ呟いた。 ゆっくりと、黄瀬は腰を動かした。黒子の内壁を擦り上げ、突き上げし、じれったいほど時間をかけてずるずると竿が引きずり出されていく感覚に、鳥肌がたちそうだ。
「や……ぁ……」
きつく目を瞑ると黒子は、嬌声を少しでも抑えるために口元へと手を持っていく。手の甲を唇に押し当てていると、それに気付いた火神がぐい、と黒子の手を取った。
「声、聞かせろよ」
黄瀬の腰が、優しく黒子の中を揺さぶっている。ひっきりなしに声が洩れそうになるのを、唇を噛み締めて黒子はこらえようとする。
「ばーか」
火神がそっと黒子の唇に触れてきた。指でぐい、と唇を、噛み締めた歯を、こじ開けようとする。
「んっ……んーっ……」
火神の手から逃れようとして身を捩ると、黒子の中に潜り込んだ黄瀬の性器が、内壁をぐい、と擦り上げる。
今の今までもどかしい思いをしていたというのに、いきなり大きく中を擦られ、突き上げられ、黒子は思わず声をあげてしまった。
ヒクヒクと内股が震えてきて、黄瀬の肩にかかった足でしがみつこうとするが、うまくいかない。おまけに口の中を掻き混ぜる火神の指も気になった。気を逸らしかけると、黄瀬のペニスが何度もぐりぐりと黒子の中を大きく擦った。
黒子の頭の中は真っ白になりそうだった。何も考えられないぐらい気持ちよくて、もどかしくて、そして熱かった。
「ん、ふ……ぅ……」
クチュ、と音を立てて唾液ごと口の中を掻き回されるのも気持ちいい。火神のごつごつとした指が舌の上を滑るのを捕まえようとすると、ズルリと指は引き抜かれていく。
かわりに黄瀬の唇が、黒子の唇を塞いだ。
「こっち見て……黒子っち、俺を見て」
額に汗の粒を浮かべて、黄瀬が囁く。
「……黄瀬、君」
呟いた黒子の口の中に潜り込んだ黄瀬の舌がグチュ、と音を立てながら唾液を啜る。
「んんっ……」
黄瀬の突き上げる速度がスピードを増し、いつの間にか黒子の深いところを激しく攻め立てていた。
火神とは違うと、黒子は思った。
攻め方が黄瀬らしいと、キスの合間に黒子は小さく笑った。
いたわるような手つきで黒子の頬や体のラインをなぞりながら、黄瀬の動きが頂上を目指しだす。
大きく広げた黒子の足が、カクカクと揺れている。片方はソファの背もたれにかけられ、もう片方は黄瀬の肩からずり落ちそうになりながら、不安定に揺れている。
「あっ……あ、ぁ……」
火神の手が、黒子の胸の先端をきゅう、と摘み上げるのと、黄瀬の先端が黒子の中をひときわ大きく突き上げるのとは同時だった。
ビクン、と体をしならせて身を捩ると、黒子の性器が大きく震えた。それから、黄瀬の腹や、黒子の腹に白濁したものを放っていく。
同時に、黒子の中もまた、黄瀬が放ったものでたっぷりと濡らされていた。
少し不満そうな顔で火神が、黒子の顔を覗きこんでくる。
「気持ちよかったか?」
気持ちよくないように見えただろうか? 小さく首を傾げて黒子は、火神を見つめ返す。 「気持ちよかったっスよね、黒子っち」
息を喘がせ、擦れた甘い声で黄瀬が尋ねるのに、黒子は「はい」と素直に返した。
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