朱2

  大倶利伽羅の指が一期一振の後孔を出入りしている。ぬぷぬぷと湿った音を立てながら、節くれだった指が内側の浅いところを擦り上げる。あっという間にむず痒いようなもどかしいような熱が一期一振の中に込み上げてきた。
  腰を揺らすと尻たぶをパチンと叩かれた。
「ヒッ」
  思わず声をあげ、一期一振は大倶利伽羅の首にしがみついていた。
「なんだ、感じるのか?」
  耳元で、低く笑いながら大倶利伽羅が尋ねてくる。
「ちが……っ!」
  否定しようとして再び尻を打たれた。小気味いい音があたりに響き、一期一振は腰をくねらせ、大倶利伽羅にすがりついた。ちょうど腹筋のついた大倶利伽羅の腹に、一期一振の腰が押し付けられるような格好になった。一期一振は尻を叩かれるたびに大倶利伽羅の腹に自身の昂ったものを擦り付けた。気持ちよかった。前も後ろも、異なる快感に支配され、一期一振は身体が求めるまま快楽を追いかけた。
  大倶利伽羅はそんな一期一振の様子を見て、口元に淡い笑みを浮かべる。
「いやらしいな、お前の身体は」
  言いながら大倶利伽羅の指が、ぐりっ、と一期一振の中を深く抉る。
「ひっ、ん、んんっ……」
  ブルッと一期一振は身体を震わせながら、先端から先走りの液を振り撒いた。
  ポタポタと滴る白濁が、大倶利伽羅の腹をしとどに汚す。
「すごいな。こんなに漏らしてもまだ欲しがってる」
  中も、外も。卑猥な声で大倶利伽羅が耳元に囁きかける。
  一期一振は首を横に振り、その言葉を否定しようとした。
  だが、それよりも早く唇を塞がれた。くちゅっ、と湿った音がして、大倶利伽羅の舌が一期一振の口の中に潜り込んでくる。
「ん、んっ……ぅ……」
  舌が口内を蠢く一方で指で後孔内をかき混ぜられ、一期一振は身体を小刻みに震わせた。大倶利伽羅の首にしがみつくような格好のまま、嫌らしく腰をくねらせるとさらに奥深いところへ男の指を飲み込もうとする。
「淫乱なのは元々の体質なのか?」
  唇が離れると、大倶利伽羅は神妙な顔つきでそう尋ねてきた。
「ちがっ……」
  怒ったようにムッとしてみせると一期一振は、大倶利伽羅の首に回した腕に力を込める。くい、と男の顔を引き寄せると再び唇を、今度は自分から合わせていく。
  最初から深く唇を合わせると、一期一振は大胆に舌を使った。男の舌を強く吸い上げ、唾液を交わし合う。じゅるっ、じゅるっ、と音を立てて舌の根を深く啜りながら自ら腰を押し付けていく。体の奥深いところを長く節くれ立った指で擦られると、鼻にかかった甘い声が洩れた。それがさらに男を煽ることも、一期一振はすっかり承知の上でのことだ。
「んっ、ふ……っ……」
  ちゅぅ、と音を立てて唇を放すと、潤んだ眼差しで男を流し見た。褐色の肌がしっとりと汗ばんでいるのが着ているものの上からでも感じられる。
  ふっ、と笑みが零れた。
「脱ぎませんか。その格好では興醒めです」
  言いながら一期一振は、大倶利伽羅の衣服に手をかけた。遠慮がちに袖のあたりをくい、と引っ張り、早く脱ぐようにと無言でせっついてみせる。ちらりと男を見ると、彼は口の中にたまった唾液をごくりと飲み込むところだった。褐色の喉が上下したかと思うと、黄金色の瞳に剣呑な色が深く宿るのがわかった。
「そうだな。お前のいやらしい姿をたっぷりと見せてもらったら、その気になるかもな」
  ふっ、と大倶利伽羅は微笑んだ。意地の悪い金の双眼が、意地悪くにやつきながら一期一振を見つめてくる。
  ぐい、と身体を離されたと思ったら、一期一振の体はふわりと一瞬宙を浮き、畳の上に転がされていた。畳で擦れた肩が熱かった。
「自分でして見せろ。いやらしく誘えたなら、脱いでやらないでもない」
大倶利伽羅はそう告げると、一期一振の目を覗き込んでいく。
  一期一振は大きく息を吸い込んだ。大倶利伽羅の股間の昂りは今にも弾けてしまいそうに思えた。布越しにも固くなっているのがありありと感じられたが、それでもまだ、一期一振を焦らそうとするのか。
  涙目になりながらも一期一振はおずおずと手を自身の股間へと伸ばした。だらだらと涎を滴らせた自らの竿を握り込むと、ゆっくりと手を動かす。見せつけるようにニチャニチャと淫猥な音を立てながら、竿を扱いた。新たな雫が先端の小さな孔に溜まると、それを指で掬ってペロリと舐めてみせる。上目遣いに男を流し見ると、彼ははあっ、と粗い息を吐き出すところだった。
「……来て」
  誘うように艶然と、一期一振は大倶利伽羅を見遣った。
  両足を大きく開脚し、後ろの孔が見えるようにわずかばかり腰を浮かしてみせる。だらだらと滴る先走りが陰毛を濡らし、たらりと後ろへと零れていく。
  大倶利伽羅は、ゆっくりと着ていたものを脱ぎ始めた。衣擦れの音がして、最後には畳の上に全て投げ出し、褐色の肌を一期一振の目の前に晒した。
「ああ……」
  一期一振は溜め息をついた。
  目の前の男の肌は引き締まり、均整のとれた筋肉がついていた。同じ男でありながら、見映えのする目の前の体に視線が釘付けになる。
「早く……」
  言いながら一期一振は、自分の指で後孔をくぱ、と開いた。襞がひくつき、自身の指までも飲み込もうとするのを感じてもどかしそうに小さく喘ぐ。
  大倶利伽羅はペロリと自身の唇を舐めた。赤い舌がちらりと見えて、いやらしい。
  立て膝にして尻をわずかばかり浮かすと、滴り落ちた先走りがポタリ、ポタリ、と畳に染みを作る。その卑猥な光景は、一期一振の脳裏に容易に思い描くことができた。
「はや…く……」
  呟きながら一期一振は、指の先を自身の襞の隙間に押し込んでいた。つぷ、とあたたかな襞の中心に指を突き入れると、先の方でぐるりと弧を描くようにして掻き混ぜてみる。甘い声が洩れた。
「んっ……ん、んぁっ……」
  立て膝にした足がカクカクと震え、一期一振はさらに大きく足を開いた。
  その様子を大倶利伽羅はじっと凝視していた。ごくりと唾を嚥下して、剣呑な黄金色の瞳で一期一振を見つめている。
「……っ」
  不意に大倶利伽羅は、目の前の白い膝頭をがし、と掴んだ。
  それには構わずに一期一振は、自身の後孔を指で掻き混ぜ続ける。ぐちゅぐちゅと淫猥な音があたりにいっそう大きく響き、一期一振は切ない声を上げた。
「挿れ……大倶利伽羅殿、早く、挿れ……っ!」
  腰を捩り、涙で潤んだ瞳で一期一振は男を流し見た。
  大倶利伽羅の手がぐい、と膝を開き、大きく開脚させる。それから開いた足の間に身を落ち着けると、ゆっくりと顔を太股へと下ろしていく。
「甘いにおいがするな」
  大倶利伽羅は呟いた。
  太股へとゆっくりと顔を下ろしていくと、股の付け根に唇を押し付け、何度も柔肉を甘噛みをしたり舌でざりざりと舐め上げたりした。きっと、一期一振の指がどんなふうに襞の中に潜り込んで蠢いているのかを、確かめているのだろう。
「はや、く……」
  掠れる声で尚もねだると、指ごと襞の縁をペロリと舐められた。
「んっ、ぁあっ……!」
  太股の付け根の筋肉がピクピクとなり、一期一振は見せつけるように指をさらに深く襞の奥へと押し込んだ。ぐちゅぐちゅと音を立てて中を掻き混ぜると、大倶利伽羅の舌がそれを追いかけるようにして襞の中に潜り込んできた。
  ぬるりとした感触に、一期一振は肌の表面に鳥肌が立つのを感じる。
「や、め……」
  ゾクゾクと身体が震えた。指ごと内壁を舐められ、恥ずかしくてたまらなかった。慌てて指を引き抜くとしかし、いらやしい水音がちゅぷん、と響く。
  襞の中から指が抜け出たことで大倶利伽羅はいっそう大胆になった。ぐりゅ、と舌を捩じ込むと、いっそう深く一期一振の中へと舌を押し込んでくる。内壁をこそげるようにして舐め回しながら、なまあたたかいものが一期一振の中を蹂躙している。いやらしくも気持ちよく、また恥ずかしい光景に一期一振は目をぎゅっと閉じた。
  ぴちゃぴちゃと湿った音がして、大倶利伽羅が後孔を執拗に舐めてくるのが感じられる。
  一期一振は、後孔から引きずり出した指で自身の竿を握り締めた。最初はおずおずと、そのうち次第に大胆に手を動かして、快感を追い求めた。
  大倶利伽羅の舌の動きに合わせて手を動かすと、得も言われぬ快感が全身を駆け巡った。
  あられもない声が次から次へと込み上げてきて、一期一振の唇から洩れ続ける。気持ちよすぎて、自分が自分でなくなってしまいそうな、奇妙な感覚がした。
「ぉ、お…くりか……」
  はふっ、と息を吐くと一期一振は、片手で口元を覆った。唇の端から涎が垂れて、みっともないことこの上ない。
  ようやく大倶利伽羅の顔が離れていく頃には、一期一振の後孔は内側からしっとりと潤っていた。
  抜け落ちた質量を求めてか、一期一振の後孔がヒクヒクとなった。大倶利伽羅の唾液と自身の先走りで濡れた襞が、いやらしく蠢く。
  一期一振は片手を差し伸べた。
「……来て、くだされ」
  欲情し、掠れた声で大倶利伽羅を誘えば、彼はすんなりと一期一振の望みを叶えてくれた。
  白い膝を限界まで大きく割り開き、濡れてヒクつく後孔に自身の竿をひた、と押し当てた。
  自らの舌で唇をさっと舐めて潤すと、大倶利伽羅はぐい、と腰を押し進めていく。一期一振は大きく喘いだ。
  ごりごりと中を擦り上げながら、大倶利伽羅の竿が根本まで埋められた。肉と肉とがぶつかり合い、パン、と音が響いた。あまりにも強い衝撃に、一期一振の性器からわずかながらも白濁がパラリ、と零れる。
「あ、あぁ、ぁ……」
  甘い声を上げながら一期一振はいやらしく身体を捩った。気持ちよすぎて、どうにかなってしまいそうだ。
  大倶利伽羅は低く笑いながら、そっと一期一振の胸へと顔を埋めた。
  淡く色付いた乳首をじゅるっと音を立てながら強く吸い上げられ、一期一振はさらに大きく身をのけ反らした。そうしながらも両足を大倶利伽羅の腰に絡め、しがみついていく。
「あなたの熱が……欲し、ぃ……」
  呂律の回らない状態でそう告げる。
  こんなふうに誰かと肌を合わせるのは初めてのことだったが、他の刀剣男士や弟たちの何人かから話には聞いていたから、どうすればいいかは一期一振にはわからないわけではなかった。
  だが、こんなふうに熱くて苦しくて、そして気持ちよいものだとは思ってもいなかった。自分自身が体験したことがなかったのだから、想像しようがなかったのだ。
  それでも、身体はどうすればいいのかわかっているようだった。
  大倶利伽羅は一期一振の胸から顔を上げると、静かにくちづけた。
  深くしっとりとしたくちづけにさえ、一期一振は感じていた。



(2016.9.24)


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