ゆっくりと御手杵のペニスが同田貫の体を押し開いていく。
指よりも太くて長い質感のものがズブズブと同田貫の中に沈み込んでくると、自然と声が洩れ出す。
「ん……ぁ、は……」
しがみついた男の体を強く抱きしめた。
御手杵が腰を揺すり、同田貫の中へと楔をややねじるようにして押し込んでくる。
昨日、男たちに穿たれた時ほどきつくは感じないのは、相手が気心の知れた御手杵だからだろうか。
サイズとしては、おそらく男たちの中の誰よりも御手杵のペニスが大きくて長い。そこそこの硬さで、下から同田貫の中をやわやわと突いてくる。
「ばっ……あっ、あ……」
しがみついたまま同田貫は、御手杵の髪をぎゅっと鷲掴みにして握った。
「ぅ……ごく、な……」
言った端から突き上げられ、同田貫は思わず腰を浮かせて逃げを打とうとする。
「逃がさない」
そう告げるが早いか御手杵は、同田貫の腰を掴んでぐいぐいと引きずりおろそうとした。
「やめっ、あ……」
ぐち、と湿った音がする。ここまできたら、恥ずかしいなどと言っていられるような余裕はもうない。
指とは違い、太くて長いものが体のずっと奥のほうにまで押し込まれ、同田貫は男の肩口にしがみついたまま、啜り泣くような声を洩らし続ける。
声を上げながらちらりと薄目を開けて下腹のほうを見ると、互いの腹の間に挟まれた同田貫の性器がゆらゆらと揺れていた。硬くなって先端からはだらだらとはしたなく先走りを零しながら、御手杵の腹に触れるとはヒクついている。
「全部、挿れていいよな?」
絵手杵の手が、ぐいぐいと同田貫の腰を引き寄せる。
強引なくせにどこか優しい手つきと声が、同田貫の体をいっそう煽り立てる。
昨日、男たちに犯された時にはあんなに辛かった行為だというのに、今は気持ちいいと思えることが不思議でならない。もちろん痛みはあるのだが、それ以上に、素直に気持ちいいと感じられる。
「すごいな、正国」
からかうような御手杵の声に、はぁ、と深く息をついて同田貫は目を開けた。自身の竿に触れるか触れないかのところに手をかざし、御手杵が鼻息を荒くしている。その手のすぐ下でふるふると震える性器の先端に先走りがぷくりと盛り上がっては、たらたらと竿を伝い落ちていく様子があまりにもいやらしく見えて、はっ、と同田貫は息を飲んだ。
「これ……気持ちいいからなんだろ?」
いちいち確かめないでくれと思いながら、同田貫は唇を噛む。
御手杵が嬉しそうな笑みを浮かべて、同田貫の性器に手を這わせた。先端をてのひらで包み込むと、ヌルヌルになった亀頭に先走りを塗り込めるようにして、手を動かす。
ぬかるんで湿った音が同田貫の耳にいやらしく響いた。
あまりの淫猥さに耐え切れずもぞもぞと尻を動かすと、同田貫の中で御手杵の竿が硬さを増した。
「ふ、ぁ……」
反射的に尻の筋肉を締めると、中に潜り込んだ御手杵の性器がごり、と内壁を擦り上げる。
「ん、く……」
慌てて御手杵の腕に掴まり直そうとしたものの、力がうまく入らずに爪で二の腕を引っ掻いてしまった。
「いてっ」
痛いと言いながらも御手杵は、同田貫の竿を撫でるのをやめない。
背中に回した両足で御手杵の体にしがみつくと、同田貫は緩慢な動きで腰を揺らしはじめる。それに合わせて御手杵の手が動き、同田貫を追い上げていく。
「ん……あ、あ……」
目の前がスパークするような感じがした。
一瞬、頭の中が真っ白になって、つま先から頭の天辺のでを快感が駆け抜けていく。
見ると、御手杵の手は同田貫の白濁で汚れていた。
それから先は、実のところ同田貫はあまりよく覚えていない。
精液にまみれた手を感慨深げにひとしきり眺めてから御手杵は、付着したものをペロリと舐めた。「ちょっと苦いな」と言って照れたような笑いを浮かべる男の言動がこの上なく恥ずかしくて、同田貫は思わず男の背中をドン、と叩いていた。
「舐めるな、馬鹿」
そう言うと、御手杵はどこか決まり悪そうに微かな笑みを浮かべてから、同田貫の体を膝裏から掬い上げるようにして畳の上に押し倒した。
「今度は俺も気持ちよくしてくれよな」
言うが早いか御手杵は、大きく腰を打ち付けはじめる。
ズルズルと引きずり出したかと思うと、同田貫の奥を激しく攻め上げる。湿った音と、肌のぶつかる音がして、同田貫の体は大きく揺さぶられた。
御手杵の肘にかかった同田貫の足がかくかくと不安定に揺れている。
声も出ないほどの快感が体の中を何度も走り抜け、同田貫を翻弄する。
しがみついてもしがみついても、力が出ないのと汗で手が滑るのとで、御手杵の体を抱き留めることができない。
それなのに、同田貫がそんな状態で困っているのを知っていて、御手杵は胸のあたりへと顔を伏せてくる。乳首に歯を当て、チュッ、チュッ、と吸い上げられると、今度は別の快感が同田貫の中を駆け抜けていく。 「っ……も、やめ……」
同田貫の口の端から涎が零れる。
御手杵の腹に擦られて、いつしか同田貫の性器が再び勃ち上がっていた。さっき吐精したばかりの性器は先端から先走りを溢れさせ、竿を伝いおりて陰毛や尻のほうまでベトベトに濡らしている。
「駄目だ。やめてやらない」
はあ、と熱い息を吐き出して御手杵が呟く。
「もっと奥まで、俺のものにしてやる……」
鰓の張った部分で同田貫の中を擦り上げながら、御手杵はさらに奥のほうを突き上げた。
同田貫の喉がヒュッと鳴って、力の出ない手で、足で、御手杵にしがみつく。畳の上で肩が擦れたが、それ以上に快楽の波は大きかった。
ヒクヒクと同田貫の窄まりが収縮を繰り返し、二度目の絶頂を迎える。
それと同時に、同田貫の中で御手杵のペニスが大きく膨張した。
熱くてヌルヌルとしたものが同田貫の腹の中に放たれ、そのままの状態で御手杵は二度、三度と同田貫の奥を激しく突いた。大量の白濁が同田貫の腹の中を満たし、結合部からもたらりと溢れてくる。
「ん……あ、ぁ……」
体を強張らせた同田貫は、御手杵にしがみついたまま何度も体を痙攣させた。
畳の上で素っ裸で抱き合ったまま、二人はしばらくじっとしていた。
全身の力を使い切ってしまったような感じがして、すぐには動けない。
御手杵の手がそろそろと同田貫の肩や尻を撫でていくのが、心地よく感じられる。
「俺……お前のことが、好きだ」
耳元で御手杵が囁く。
「……そんなこと言われても、俺は困る」
同田貫は眉間に皺を寄せて返した。ふい、と顔を横に背けて、目を閉じる。
冷たく返したものの、不思議と同田貫の気持ちは落ち着いていた。
もしかして御手杵のおかげだろうか。
それでもこの穏やかな瞬間に身を置いていてさえ思い出すのは、男たちに凌辱されたことばかりだ。
「……あいつら……許さねえ」
ふと、言葉が洩れた。
殺してやる──同田貫は、その物騒な言葉を喉の奥に嚥下する。
同田貫の気持ちを感じ取ったかのように、御手杵がぎゅっと体を抱きしめてきた。男の胸の中にすっぽりと包み込まれ、同田貫は小さく身じろいだ。
「仕返しなら、付き合うぞ?」
同田貫の性格をよく把握している御手杵らしい言葉だが、巻き込みたくはない。
「いや、いい。これは俺のケジメだからな」
ニヤリと口の端を吊り上げて、同田貫は笑った。
胸の奥底にほの暗い情念が宿り、小さな復讐の炎を灯した瞬間だった。
(2015.4.9)
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