『and more 2』
(作:篠宮 めえ)



  ゾロのシャツの襟元を鷲掴みにするとサンジは、勢いよく唇を合わせた。
  女性を相手にする時のような優しいキスではなかった。噛みつくような激しいキスを、何度も繰り返した。平然とした様子のゾロが癪に障る。もっと相手が驚かないものかと考えながらサンジは、キスを繰り返す。舌の先で唇の端をペロリと舐めると、すぐさまゾロの舌がサンジの口腔内に潜り込んできた。
「……んっ……」
  きつく吸い上げられ、咄嗟にサンジは鼻にかかった甘い声をあげてしまった。
  こんなキスは……何もかもすべてを喰い尽くされてしまいそうなこんなキスは、初めてだ。
  しっかりとゾロの襟元を握りしめ、サンジは音を立てて口づけを繰り返した。
  すぐに、身体に震えが走り出す。サンジはしがみついたゾロの襟元からゆっくりと手を離し、広い肩口に指を這わせた。筋肉質なゾロの身体から、ほんのりと汗のにおいが立ち上っている。ゾロの首の後ろに手を回し、全身でしがみついていく。
「女っ気が全然ない奴だと思ったら、こういうことだったのかよ」
  茶化すようにサンジが尋ねると、ゾロはにんまりと口の端を吊り上げて笑った。
「誘ったのはてめぇだろ」



  湿った音が続いていた。
  唇と唇を合わせたその隙間から、たらりと透明な唾液が零れ落ちる。甘い、甘い二人の唾液だ。
  サンジの手が、ゾロのシャツを脱がせようとしていた。
  ゾロの手が、サンジのスーツを床に落とし、シャツの隙間から中へと入り込んでくる。ざらついてごつごつとしたゾロの指がサンジの脇腹をするりと撫で上げ、その瞬間、サンジはピクン、と身体を大きく揺らした。
  キッチンのテーブルに、サンジの尻があたる。太っているというわけではないが痩身のサンジよりも幅のあるゾロの身体に押さえ込まれ、サンジはテーブルの端に腰を下ろした。シャツのボタンを外すのがもどかしく、躍起になったゾロはとうとうシャツを左右に大きく開いた。いちばん下のボタンがプチッという音を立てて引きちぎられ、カラカラと音を立てて床に転がり落ちた。後で拾っておかなければとサンジは、頭の隅でぼんやりと考えた。
  頭の芯がくらくらしてきそうだった。
  キスだけで、サンジの股間はじんわりと熱くなってきた。ゾロもそうなのだろうかとちらりと薄目をあけて相手を見遣ると、こちらは飢えた獣のような険しい形相でサンジの唇を貪っている。
「んっ……ぅ……」
  不意に、カタン、と音がした。
  テーブルの上に押さえつけられた身体を咄嗟に浮かして入り口のほうを見ると、寝相の悪い誰かが都合良く床の上を転がっていってドアにぶつかったらしく、いつの間にかキッチンは二人だけの空間になっていた。
「邪魔者もいなくなったことだし、これでゆっくりとできるな」
  ゾロが言った。
  サンジはゾロの首に腕を回すと、かき抱くようにして緑色の頭を胸元に引き寄せる。
「ゆっくりと、な」
  少し掠れた声で、サンジは返した。



  ざらりとした感触が、サンジの胸元を這っていた。
  熱くて、ざらざらとコンクリートのように痛くて、そして気持ちいい。
  ゾロの舌が、サンジの乳首を舐める。焦らすように乳輪の縁に舌を這わせ、突起の部分をつつき、吸い上げる。指でこねくり回されると、サンジの腹の底はむずむずと疼いてくる。
「ぅ……ぁ……」
  テーブルの端を掴んだサンジの手に、自然と力がこもる。
  ゆっくりと、太腿を押し上げられた。ゾロの肩に担ぎ上げられた足が、その不安定さに震えている。へそのあたりに何度もキスをされた。ごつごつと節くれ立った指先が、サンジの陰毛を掻き分ける。半分固くなりかけていたサンジのペニスをそっと片手で包み込むと、ゾロは焦らすようにして竿の部分を扱き始めた。
「ん……」
  唇を噛み締めて、サンジはきつく目を閉じた。
  ゾロの唇が太腿の内側をちゅ、と吸う。痺れるような感覚がその刹那、サンジの全身を貫く。大きく身体を震わせると、サンジは無意識のうちにもう一方の肩に担がれていないほうの足を大きく広げるような姿勢をとっていた。



  ゾロの唇が触れたところから、じんわりと痺れるような熱が身体の中心へと向かって走り出す。
  いつの間にかサンジのペニスは勃ち上がっており、先端にはヌルヌルとした先走りを溢れさせていた。
「ぁ……ゾロ……」
  腰を浮かしてサンジが愛撫を強請る。
  ヌルリとした感触がして、サンジは熱を感じた。ゾロの口の中に含まれたペニスが、ビクビクと震えている。ちゅう、ときつく吸い上げられると、サンジの腰は大きく震えた。淡い色をしたサンジの陰毛の中にゾロは鼻を突っ込むと、そのくぐもった香りを深く吸い込んだ。
「っ……は……」
  唇をペロリと舐めるゾロの仕草がエロティックで、サンジは背筋にぞくりと走る何かを感じた。
  気持ちよかった。
  どこが、というわけではない。全身が、気持ちよかった。特に下腹のあたりから尾てい骨にかけてのあたりは、むずむずとして焦れったいような快感に包まれていた。
  無性にキスがしたくて、サンジは、ゾロの頭を抱き寄せては口づけを繰り返した。
「なあ……指、挿れろよ」
  どこに、と言う必要はなかった。
  ゾロは黙ってサンジの尻に指を這わせた。くすぐるようにして後孔のまわりをゾロの指の腹がぐるりとなぞると、サンジは溜息のような浅い呼吸を繰り返した。
「ぁ……」






to be continued
(H16.12.16)



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