『and more 3』
(作:篠宮 めえ)
先端から滴り落ちる先走りを指に掬うと、ゾロはそれをサンジの後孔になすりつけた。擦り込むように襞の周囲から馴染ませていく。時折、ゾロの指が襞の奥へと悪戯をしかけると、サンジは背筋をエビのようにくっ、と反らせて反応した。
「ん……んぁ……っ……」
大きく背を反らすとサンジは、テーブルに手をついて腰を前へとつきだした。すらりと長いサンジの足はゾロの腰にしがみつき、股間の高ぶりがしっかりと押しつけられている。
「挿れろよ……ぁ……早くっ!」
焦れったそうにサンジが命じる。
ゾロは指をそっとサンジの中に押し込んだ。
「……はっ……」
一本目の指の関節が内壁を擦り上げた瞬間、サンジはビクン、と身体を震わせた。
「気持ちいいか?」
にやりと口の端を歪ませて、ゾロが尋ねる。
「いい……気持ち、イイ」
うわずったサンジの声は艶めいている。今にも意識を飛ばしてしまいそうな恍惚としたその様子に、ゾロはペロリと唇を舐めた。
「ここは?」
前立腺の裏側を探りながら、ゾロが問う。指の腹が緩やかな動きでサンジの内壁に沿って動く。
「あっ……!」
サンジがピクン、と大きく身体を震わせたところでゾロは指を止めた。
「ん? ここか?」
と、サンジの顔を覗き込んでからゾロは、円を描くような動きで前立腺の裏をやわやわと撫でた。
「あっ……あ、あ……」
声を堪えながらもサンジは、腰をつきだしてくる。
片手の指でサンジの中を弄り回しながらゾロは、もう片方の手を先走りに濡れたサンジのペニスに添えた。
「すごいな、おい。もうイきそうだぞ?」
きゅっ、と竿を握りしめるとゾロは、そのまま力を込めて手を上下させた。ぐちゅぐちゅと湿った音がして、先端の割れ目から新たな精液が滲み出てきた。
「ああぁ……」
首を横に振りながらサンジは、上体を起こそうとした。ゾロの腰にしがみついた足が、快感を堪えようとしてかカクカクと揺れている。まるで痙攣しているようだと、ゾロは思った。
ゆっくりと、焦らすかのようにゾロは指を引き抜こうとした。
入り口近くの襞を爪で軽く引っ掻いてやると、サンジは後孔をきゅっ、と締め付けてくる。勃起したペニスが行き場のない解放を持て余して、だらだらと先走りを溢れさせている。
「ぅ……あ……」
眉間に皺を寄せたサンジは、苦しそうに息を吐き出している。
後孔から指を引き抜いたゾロは、サンジの身体をごろんとひっくり返した。テーブルに上体を預けるような格好のサンジの尻に、下衣の中から引きずり出した自分のペニスをなすりつけた。
頭の隅で、盛っているな、とやや自嘲気味にゾロは思った。自分と同じ男……それも、共に旅する仲間でもあるサンジを抱いているというのに、こんなにも興奮している自分がいる。この身体の奥に触れたい。もっともっと焦らしてやりたい。少し苦しそうな、切なげな掠れた喘ぎ声をいつまでも聴いていたい。そう思う自分は、どこかおかしいのだろうか。
白く華奢なサンジの腰を両手でがっしりと鷲掴みにすると、ゾロはゆっくりとペニスを後孔に押しつける。
こんなことは間違っていると、ゾロの中の理性が告げていた。
それでも、この高ぶりをサンジの中にすべて収めこみ、激しく揺さぶりたいと思う自分の気持ちのほうが強くて。
抑えきれない自分が、今、ここにいた。
尻のあたりでゾロの高ぶったペニスが蠢いているのを感じたサンジは、咄嗟に背後を振り返った。めいっぱい身体を捻ってゾロを見遣る。
「おい……」
掠れた声はしかし随分と弱々しく、力のない声にしかならなかった。
「おい、なにやってんだよ、お前は」
そこは、違う。俺はレディじゃないんだぞと、ややムッとした様子で言うと、サンジはゾロの片手を取り自分の性器へと導いた。
「場所が違うぞ、クソマリモ」
そう言ってサンジはゾロの方へと尻をつきだし、きゅっ、と太腿を締めてみせた。
「このあたりだろ?」
後ろを振り返りながら、サンジは言う。
尻から太腿にかけてのあたりを指し示すと、ゾロの腰を引き寄せる。
怪訝そうな顔つきのまま、ゾロはサンジの太腿にペニスを差し込んだ。
太腿に挟み込まれる感触は、後孔に入れるのとはまた違った快感をゾロにもたらしてはくれたけれども、どこか物足りないような感じがする。確かに、気持ちはいい。だが、どうにも気分が盛り上がってこないような気がするのは、これはゾロの気のせいなのだろうか。
サンジの白い背中をじっと凝視したまま、ゾロは一心に腰を動かし続ける。
中に挿入させてもらえないのは、やはり男同士だからなのだろうか。セックスのやり方を教えてやるとサンジは言ったが、本番まで面倒を見るつもりはなかったということなのだろうか。
考えても考えても、新たな疑問が湧いてきて、行為に集中することができない。
ゾロは苛々と腰を揺さぶった。
おざなりに腰を前後に揺さぶると、太腿に締め付けられたペニスが先走りを先端から溢れさせ、ぐちゅぐちゅと湿った音を立てた。太腿に挟みきれずにみっともなく突き出たゾロのペニスの亀頭を、サンジの指がやわやわとなぞりあげる。
触られれば、それなりに気持ちがよかった。
ゾロのペニスからは精液がだらだらと溢れ、サンジの太腿を汚した。本心ではもっと熱くて狭いところを求めているのに、快感を得たゾロの身体は必死になってピストン運動を繰り返している。
何かが、おかしい。
頭の隅の、冷静な部分でゾロは思った。
サンジの思うセックスと、自分の思うセックスとが微妙にずれているようだとゾロが思い始めたのは、この時からだった。
to be continued
(H16.12.19)
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