『なりゆき☆まかせ 2』



  夜のキッチンで、サンジはゾロに抱かれていた。
  いつもより明度を落とした室内に、淫靡な音と切なげなサンジの声が響いている。
  深夜を過ぎてしまえば、ここへ来るものはほとんどいなくなる。ルフィが盗み食いをしにきたり、他の仲間が喉の渇きを潤す程度にやってくることもあったが、そういったことはごく稀なことだった。このところルフィの盗み食いの回数は減っている。もしかしたら寝る前の夜食に、胃にこってりときそうなものを選んで出しているからかもしれない。今夜は特にこってりとしたメニューだったから、おそらくここへ来ることはないだろう。
  そんな打算的なことを考えながら始めた行為だった。
  それなのにゾロは何を焦っているのか、最初から飛ばし気味のペースでサンジを攻めてくる。
  こんなことなら断ればよかったと、なかば後悔しながらサンジは、ゾロに抱かれていた。



「あっ、あ、ぁぁあ……」
  掠れた声がサンジの口から洩れた。
  ゾロは、自分の上に跨ったサンジのペニスを手のひらできつく握り締め、強弱をつけて扱いた。くちゅくちゅと湿った音がして、先端の割れ目からは白濁した先走りの液が溢れ出してきている。
  背後から抱きしめられたサンジは、肩口にかかるゾロの熱い吐息を感じていた。下からの律動的な突き上げと、股間を這い回る指の感触に目眩がする。
  ベンチに腰掛けたゾロはサンジの足が大きく開くように、片方の腕を膝の裏に差し込んだ。
  ゾロが腕を引くと、サンジの足が開いて股間を隠すことができなくなる。えらく自分には不利な体勢を取らせるものだなと、サンジぼんやりとした頭で考えた。
「夕方……なんで俺には食わせなかったんだ?」
  抱え上げた足を軽く揺さぶると、それだけで結合点に重力がかかる。ゾロは、サンジの前をやわやわと握り締めながら時折、抱えた腕をダンベル上げの要領で動かしてみた。
「はっ、あ…ぁ……んっ……」
  何度も頭を横に振り、サンジは押し殺した苦しそうな声をあげる。
「言えよ。なんでだ?」
  ぐい、とゾロが腕をあげると、よりいっそう結合が深くなる。そのまま、中を抉るようにして腰を突き上げるとサンジの頭が大きく揺れた。
  ゾロの胸に押し付けられたサンジの肩が、背中が、汗に湿っている。
「…──」
  口の中で微かに呻くと、サンジはゾロの腕にぎゅっとしがみついた。



  もう少しで達すると思った瞬間、ドアが開いた。
  サンジの身体の深いところではゾロが暴れていた。擦り上げられるたびにサンジは自然と自分の後孔がゾロを締め付け、溢れる命の源を搾り取ろうとしていることに気付いていた。もう、あと数回のピストン運動で二人は共に到達することができるだろう。
  ごつごつとして太いゾロの指が、サンジの胸の突起をまさぐっている。
  それなのに。
  気付くとすぐそこに人影が迫っていた。
  いくら明るさは落としてあるからといっても、見える程度にしか落としていない。誰がどんな格好で何をしているかなど、すぐに解ってしまうはずだ。
「ぁ……」
  サンジは一瞬、身体中の筋肉を緊張させた。
  見られたくないと思うと同時に、それまではほとんど感じていなかった羞恥心がむくむくと頭をもたげ始める。
「……なんだ、ルフィか」
  サンジの耳元で、ゾロが低く呟いた。
「なんだ、お前らかよ」
  と、平然とルフィも返す。
  二人のほうをちらりと見ただけでルフィは冷蔵庫の前へ足を向けた。ドアを開け、床に座り込む。
「つまみ食いしにきただけだから気にすんな」
  そう言うが早いか、ルフィは冷蔵庫の中のものを片っ端から口に詰め込み始めた。夕飯はこってりとした味付けの油ものが中心だった。普通の人間なら今頃は胃もたれの一つでも起こして苦しんでいるはずだが、ルフィの胃袋は普通ではないらしい。生野菜から乾燥肉まで、ありとあらゆる食物を次から次へ、飽くなき様子で飲み込んでいく。
「クソッ……悪食め」
  忌々しそうにサンジは、ルフィの後ろ姿を睨み付けた。
  こんな時でも自身の立場を考える自分に、嫌気のさした瞬間でもあった。



  ゾロの指は、サンジのペニスを扱いている。
  声を立てないようにサンジが唇を噛み締めていると、冷蔵庫の前に座り込んでいたルフィが不意に立ち上がった。
「あー、食った、食った。ごちそうさん、サンジ」
  よっこらせ、と大仰な様子のルフィは、満腹になったことで体型の崩れかかった風船のような腹を波打たせながら二人のほうへと近づいてくる。
「ん…んっ……」
  鼻にかかったサンジの艶めいた声が部屋に響く。
  ルフィがずい、とサンジのほうへと顔を近づけた。
  それからゆっくりと、ルフィはサンジの唇に舌を這わせる。
「うぇ、煙草くせぇ……」
  ペロリ、とサンジの唇の端を舐めてから、ルフィは呟いた。煙草のにおいはあまり好きではないようだが、それ以上にサンジに触れてみたかったようだ。
  そんな二人のやりとりを見て、ゾロは鼻で笑った。
「もう満足しただろ、ルフィ」
  サンジのペニスを惰性で愛撫しながらゾロが言うと、ルフィはこくん、と首を縦に振った。サンジはというと、決まりが悪いのか、俯いたままルフィの顔を見ようともしない。
「腹がふくれたから俺はもう寝る。おやすみ、ゾロ、サンジ」
  たるんだ腹をぽん、ぽん、と軽く叩きながらルフィは二人に背を向けた。
  パタン、とドアが閉まった。
  ゆっくりと、サンジの口から息が吐き出される。
「よかったな。ルフィのやつがさっさと部屋に戻ってくれて」
  少しばかり残念そうに、ゾロ。
  反論しようと口を開いたところで、サンジの身体が大きくしなった。痛いほどに竿の部分をゾロに握り込まれたのだ。
  サンジの喉が鳴り、先ほどから掴んだままだったゾロの腕に爪が食い込む。
「あ……っう……」
  その瞬間、サンジの先端から滲み出た精液が一滴、つー、と糸を引いて零れ落ちた。






to be continued
(H15.11.8)



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