『なりゆき☆まかせ 3』
身体の中で蠢く異物感に、サンジはふと目を覚ました。
うにうにと内壁を擦り上げる感触と、圧迫感。
痛みはない。
前日、港に着くと同時にサンジはゾロと二人で宿をとった。仲間たちの目を避けるようにして路地裏の木賃宿に転がり込んだのは、まだ日も高い時間帯だった。
「あぁ?」
まだぼんやりと霞がかかったような状態の頭をフルに回転させて、サンジはあたりを見回す。
目の前にゾロの顔がある。息を荒げたゾロのこめかみを、汗の粒が伝い落ちてくる。サンジは、汗でへばりついたゾロの前髪を指でそっとかき上げた。
「──……いっ…?」
不意に、身体の奥深いところを抉られた。
尻の筋肉がきゅっ、と締まり、それと同時にサンジの中に入り込んだゾロが締め付けられる。
「おい、力抜け、力!」
どこか困ったように眉間に皺を寄せて、ゾロが言った。
「んっ……わかってるけど……」
痛みを堪えようとすると、逆にゾロを締め付けてしまう。不必要に身体のあちこちに力が入ってしまって自分の意志ではどうにもできないのだ。
サンジは唇を噛み締め、腹の上のゾロを見上げた。
ズルズルとゾロのペニスが身体の中から引きずり出される。
先端ぎりぎりのところまで引き抜いておいて、強く突き上げる。突き上げられる瞬間、陰毛が結合部に擦れてサンジにちりちりとした痛みを与えた。
「あっ、あ……」
下腹部に力が入り、つい声が出てしまう。サンジは声が洩れないように唇をぎりりと噛み締め、ゾロの背に手を回した。
しっかりとしがみつくと密着度が高まる。そのままサンジはゾロの腰に足を絡め、全身でしがみついていく。太股の内側に力を入れてきゅっ、とゾロの腰を締め付けてやると、耳元に熱い吐息がかかった。
「…っ……」
余裕のない表情のゾロは眉間に皺を寄せ、やけに神妙な顔つきをしている。
汗に濡れた裸の肌に顔を寄せると、サンジはゾロの体臭を鼻いっぱいに吸い込んだ。
出入りする律動が、次第に早まってくる。
サンジは片手を二人の腹の間に潜り込ませると、自分のペニスを握り締めた。
「……ぁふっ、はっ……あ……」
快楽を追いながらもサンジは、何故、自分と同じ性別のゾロに犯されているのかをぼんやりと考えていた。
嫌だというわけではない。が、この男に対して愛情があるかというと、それもどうやら少しばかり疑わしい。仲間という言葉も、今の二人の関係を考えると嘘になってしまう。
それではいったい、自分たち二人は何なのだろう。
仲間でもなく、恋人でもなく。
「ぅ……ああっ」
ぐりぐりとゾロの先端が、身体の奥深いところを突き上げた。
痛みよりも鋭い快感が、身体の中で渦巻いている。手の中のサンジ自身が、ブルン、と大きく震えた。
ベッドに突っ伏したまま、サンジはぼんやりと考えている。
ゾロに犯されながら考えたことが、今だに頭の中でぐるぐると堂々巡りを続けている。
嫌いでもなく、好きでもなく、仲間でもないとしたら、いったい自分たちの関係はどういうものなのだろうか。
手にした煙草をブラブラとさせながら、サンジは考えている。一服すれば気持ちもかわるだろうが、サンジはタールとニコチンで今のこの気分を手放してしまう気にはなれなかった。
目を半開きにしてぼんやりと部屋の中を見つめていると、シャワールームからゾロが出てきた。
「疲れたのか?」
腰にタオルを巻いただけの姿のゾロが、声をかけてくる。
「ああ……いや、疲れたわけじゃねえ。ちょっと考え事の最中なんだよ」
そう返すとサンジは、ゾロを見つめる。
がっしりとした筋肉質な身体。緑色の短い髪。時に鋭く、時に優しい不思議な眼差し。胸の大傷。ゾロの、掠れ気味のハスキーな声が、好きだと思った。自分が決めたことに対しては熱心なところもいい。とんでもない方向音痴だが、そこはそれ、ご愛嬌だ。何よりも、セックスの時にサンジが思うように抱いてくれるところが離れられない一因となっているのも事実だ。
男の自分がここまで、同じ男のゾロに抱かれっ放しだというのも考えようによってはおかしなことだが、それでも構わないとさえ思えてくる。
数多の女性を口説き落とし、床を共にしてきたサンジが、自分と同じ男に抱かれている──いや、犯されている──とは。
じっと眺めていると、ゾロは黙ってベッドに近づいてきた。
「まさか、まだ抱かれ足りない、ってんじゃないだろうな」
にやりと、口の端を引きつらせて笑うゾロの眼差しは、どことなく優しい。
サンジはごろりと仰向けになると、膝を立てて股間をゾロの目の前に晒した。
「もう一回しようぜ」
そうすれば、何かがわかるかもしれない──そんなふうにサンジは、思った。
パサリ、と。
ゾロの腰に巻かれていたタオルが、静かに床に落ちた。
to be continued
(H16.1.20)
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