「獄寺君っ……!」
抱き返した腕の中で、獄寺が微笑む。
ああ、この笑顔を見ることが出来るのならセックスするのも悪くはないなぁ、などと綱吉はボンヤリとした頭で考える。
「気持ちいいっスか、十代目?」
グチュ、グチュッ、と湿った音が腹の下のほうでしている。その音が恥ずかしくて、綱吉は唇をきつく噛み締める。
「んっ……んんっ、ぅ……」
腹の底に集まってきた熱が、解放を求めてグツグツと煮えたぎっている。体中を駆け巡り、腹の中で沸騰して、吐き出される瞬間をジリジリと待ち構えている。
「んん、ん……!」
はあ、と息を吐き出すと、さらに深く唇を合わされた。すぐさま口の中に侵入してきた獄寺の舌は熱くて、ねっとりとしていた。
「あ、あ……」
唇が離れていくと同時に綱吉は声を上げていた。
獄寺の肩口にしがみついたまま、腰を揺らめかせている。
「イきたいですか?」
意地悪な獄寺の問いかけに、綱吉はコクコクと頷いた。
さっきからずっと綱吉は、下腹部の熱に焦らされている。もどかしくて、苦しくて、たまらない。
「は、んっ……」
もぞもぞと膝を寄せた綱吉の爪先が、床を蹴った。
「……あ」
ふと、綱吉は気付いてしまった。
いくら照明を落としてあるとは言え、フローリングの部屋でするのはまだ、恥ずかしさが残る。ベッドの中ですら恥ずかしいのにとちらりと獄寺を見上げる。
すぐに唇が下りてきた。
チュ、と下唇を吸い上げられ、再び舌を潜り込ませてくる。ベロベロと歯の裏側を舐め上げられ、恥ずかしさで綱吉の息があっという間に上がってしまう。
「んっ、ふう……う……」
ダメだと制止をかけようとすると、素早く手を掴まれ、頭の上で一つに纏められてしまった。
「ご……く、寺、君……」
灯りを消して真っ暗に消して欲しいと綱吉は思う。
見られているのだと思うと、それだけで体が熱くなった。恥ずかしくもあるし、それ以上に、自分がどんな姿をしているのか、あまり考えたくなかった。
「……ここじゃ、嫌だ」
ボソボソと口の中で呟くと、耳元で「ダメです」と返された。
弾かれたように綱吉は顔を上げる。
「なんで、ダメなんだよ?」
ムッとして尋ねると、獄寺は優しく綱吉の頬にキスをする。
「だって十代目、河岸をかえている間に気が変わっちゃって『やっぱり止める』なんて言い出したら困るじゃないッスか、俺が」
そう言われれば、と、綱吉は思う。今まで獄寺との挿入を伴うセックスの回数が少ないのは、そのせいもあったのだ。何だかんだと言い訳を並べ立てては日和見をして先延ばしにしてきた、これはもしかしたら、そのツケなのかもしれない。
「だって……」
言いかけた綱吉の唇に、獄寺の指がやんわりと触れた。
「ダメですよ、十代目。俺の誕生日なんだから、俺のやりたいようにさせてください」
逃げることは許さないと暗に宣言されたような気分に綱吉はなった。
それを尻目に行為を続ける獄寺が、憎らしい。
「うう……」
今にも泣き出しそうな気分になりながら綱吉は、唇を噛み締めた。
嫌だ嫌だと思っていても、獄寺の愛撫に綱吉の体はあっけなく籠絡されていく。
キスをされれば気持ちがいいし、体は従順に反応を示す。
既にじっとりと先走りを滲ませていた性器は、獄寺の手が何度か竿を行き来しただけで呆気なく達してしまった。
ビクビクと体が震えたかと思うと、フローリングの床の上に仰向けになっていた綱吉の腹の上に白濁したものが飛び散った。
「いっぱい出ましたね」
嬉しそうにそう言うと獄寺は、綱吉の腹の飛沫を指でなぞって肌に塗り込めていく。
「ん……っ」
綱吉は小さく吐息を吐いた。嫌だと言えないところまできていた。体は、その先の熱を求めて暴走し始めている。
片方の足を立て膝にして、獄寺の目を覗き込む。
「獄寺君……」
それだけで充分だった。察しのいい右腕は、綱吉の唇にチュ、と口づけをひとつ、落とした。
それからゆっくりと、足を開かされた。露わにされた尻の奥の窄まりに、獄寺は顔を寄せてくる。
「ゃ……」
体をずり上げた綱吉が獄寺から離れようとすると、ぐい、と膝裏を掴まれた。胸に付きそうなぐらい膝を折り曲げられたかと思うと、自分で抱えているように言われた。綱吉は言われた通り、自分の足を抱えてじっとする。
すぐに獄寺の顔が近付いてきて、キュッと窄まった部分にヌルリとしたものが押し付けられた。
「ひっ、ぅあ、あ……」
ピチャ、ピチャ、と音がして、獄寺の舌が綱吉の窄まりの縁を舐め解していく。
啜り泣きながらも綱吉は、獄寺の奉仕に耐えている。嫌だときっぱりと拒絶することのできない自分に、嫌悪感を感じてもいる。
「あ、っ……く」
獄寺の舌先は器用に蠢き、襞を掻き分け綱吉の中へと侵入してきた。内壁を舌先がヌルリと押しやり、唾液を流し込まれる。生暖かくて、ヌルヌルとしている。気持ち悪いと思うのに、それを悦んでいる自分がいる。綱吉は自分の足を抱える手に、力を入れた。
「やっ……あ、あ……!」
腰が揺れて、綱吉の太股が痙攣したように震え出す。
グチュ、グチュ、と湿った音を立てながら獄寺の舌が、綱吉の襞の中を蹂躙する。
「ダメ……ご…く、寺、君……ダメ、汚い……」
てのひらに汗が滲んで、足を抱える手が滑りかける。
咄嗟に太股に力に入れたところへ、狙いすましたかのように獄寺の舌が内壁を押し広げてくる。
「ふっ、あ…あああ……!」
ドクン、と腹の中に溜まった熱が脈打った。
ちらりと股の間へ視線を向けると、さっき放ったばかりの綱吉のペニスがムクリと鎌首をもたげ始めている。
どうしてだろう。いつも獄寺に触られているだけで、体が熱くなってくる。今もそうだ。わけのわからない熱に冒されて、獄寺に翻弄されるばかりだ。
「……獄寺君」
ダメだと、眼差しで綱吉は訴えた。
フルフルと睫毛が震えて目尻に涙が浮かんだが、獄寺は優しい笑みを浮かべるばかりだった。
「大丈夫です、十代目。優しくしますから」
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