05.包装紙(ラッピングペーパー)2

  いちばん上のボタンまできっちりと止めたパジャマを脱がすのは、プレゼントの包装紙を剥がす時のドキドキ感に似ていて獄寺の口元はつい緩みがちになってしまう。
  パジャマのボタンをひとつ一つ、丁寧に外していく。いちばん上からひとつ外すたびにキスをすると、綱吉の体はその度ごとにふるりと震える。
  ボタンをみっつ外したところで、肌に指を這わせた。指の腹でそっと肌をなぞると、綱吉の口から鼻にかかった甘い声が洩れる。
「気持ちいいですか?」
  わかっていながらも、尋ねずにはいられない。
  恥ずかしそうにうつむく綱吉が見たいから、ついつい余計なことを言ってしまう。
「言わないで……」
  ボソボソと綱吉が呟く。
「どうしてですか?」
  よっつめのボタンを外すと、肩口からパジャマをするりとずり落としてやる。
「ここ、夕べの跡が残って赤くなってますね」
  そう言うと獄寺は、綱吉の胸に残る朱色の刻印を指でなぞる。
「ん……っ」
  綱吉の体がビクン、と震える。
「嫌、だ……」
  微かに震える手が、獄寺の手首を掴んだ。
「朝から、こんな……」
  言いかけて綱吉は、ハッと息を飲んだ。獄寺の指の腹が胸の先をくにゅ、と押し潰したからだ。
「本当に嫌なんですか?」
  嫌がっているようには見えないと、獄寺は意地悪く囁いた。
「本当に嫌なら、俺を押しのければいい。十代目にはそれだけの力があるはずです」
  獄寺の言葉通りだった。綱吉には、獄寺を押しのけ、彼から逃げ出すだけの力がある。ろくに抵抗もしないで嫌だのやめてくれだのと言ったところで、獄寺が聞き入れるはずがなかった。
  プレゼントの包装紙を破く時の乱暴さでもって獄寺は、とうとう綱吉のパジャマを大きく左右に開いた。残っていた下のほうのボタンが千切れる音がした。シャツに残ったボタンはだらりとシャツから垂れ下がり、頼りない細い糸で繋がっているだけだ。
「……いやらしい」
  上擦った声で獄寺は呟いた。
  尖り始めた胸の先に唇を寄せ、チュ、と音を立てて吸い上げる。
「は……んんっ」
  途端に、綱吉の手がぎゅう、と獄寺の頭を抱きしめてくる。
「ダメ……!」
  抱きしめられる力に逆らわないようにして、獄寺は頭の位置を少しだけずらした。目の前の突起に丁寧に舌を這わせると、あっという間に胸の先端は硬く凝ってくる。唇で挟んでやんわりと引っ張ると、綱吉の下肢が決まり悪そうにもぞもぞとしだす。
  膝を割って綱吉の足の間に体をねじ込むと、股間をぐいぐいと押しつけていく。
  身を捩って綱吉が逃げようとするのを体重をかけてねじ伏せると、今にも泣き出しそうな情けない顔をして見つめられた。
「……獄寺君」
  か細い綱吉の声は、わずかに掠れていた。



  顔を上げ、体を離すと獄寺は小さく笑った。
  すぐ目の前には、そそり立つ綱吉の乳首の緋色がおいしそうに濡れててかっている。
「プレゼントの包装紙は、全部破らなくてもいいんですよ」
  そう言って獄寺は、チュ、と綱吉の唇に自分の唇を重ねた。
「ん、っ……」
  体の下で、綱吉の体が固く緊張する。どうやって獄寺から逃げようかと考えているのかもしれない。
  獄寺は吐息だけで笑った。
  包装紙を残したままプレゼントを開ける時の背徳感は、甘くて苦い。諸刃の剣と同じだということを理解していなければならない。
  てのひらでゆっくりと綱吉の腹をなでながら、下へと手を移動させていく。下着のゴムに指をひっかけると、パジャマズボンと一緒に引きずり下ろし、太股のあたりで止める。
「ご、獄寺君……!」
  嫌だ、と、綱吉が啜り泣く。
  朝は駄目だ、これから仕事があるからやめてくれと半泣きになって綱吉が言うのを、獄寺はキスで宥める。
「痛いことはしません。辛いことも。だからじっとしててください」
  言いながら獄寺は、綱吉の下肢を攻めにかかる。こげ茶色の繁みを指で掻き分け、まだ育ちきっていない性器をてのひらに包み込む。
「や、ダメっ」
  咄嗟に綱吉の手が、獄寺の手を掴む。
  獄寺は自分の手首を押さえる指先に、唇を押し当てた。舌先でチロチロと綱吉の指を嬲れば、息を飲み込む気配がする。
  陥落するまで時間の問題だと、獄寺はこっそりとほくそ笑む。
「俺だけ祝ってもらうのも悪いですし、お返しをさせてください、十代目」
  毎年の誕生日と同じように、綱吉を抱きたいと獄寺は思った。
  今が朝だろうが、これから仕事だろうが、そんなことはどうでもいい。
「お願いです、十代目」
  甘えるように獄寺が強請ると、腕を掴んでいた綱吉の手から力が抜けていく。
「……出勤時間には間に合うようにして」
  恥ずかしそうに顔を伏せたまま、綱吉が呟いた。
「善処します」
  そう返すと獄寺は、綱吉にキスをした。



    
(2011.8.28)


BACK