夜明けの月3



  ベッドの縁に二人で腰掛けて、キスを交わし合った。
  こんなふうにレディたちも、優しいキスを受けるのだろうか。彼女たちは様々な期待を胸に、恋人と甘い時間を過ごすのだろうか。
  自分も、多分そうだ。
  エースは始終穏やかな声でサンジに語りかけてきた。あたたかな体の熱は、サンジをそれと気付かせぬぐらいゆっくりと追いつめた。何度もキスをして、唇を甘噛みされてぷっくりと膨れたところを舌で舐められた。
  手は、ごつごつとして節くれ立っていた。あたたかで大きな手は、サンジの脇腹を何度か往復した。それから、薄くてのっぺりとしたサンジの白い肌を這い上がり、胸の突起をくにくにと指の腹で押し潰そうとしてくる。
「……ぁ……──」
  呼吸が速くなるのが感じられた。サンジは声が洩れないように唇を噛み、目をぎゅっとつぶった。そうすると今度は目を閉じたことで感覚が鋭敏になったようで、エースの手がそこかしこに触れると、それだけで呼吸が乱れていく。
  目を開け、潤んだ瞳でサンジは目の前の男を見つめる。
  男は、穏やかに微笑んでいた。
「なに?」
  尋ねられ、すぐにキスされた。するりと舌がサンジの口の中に入り込み、歯列をなぞりあげていく。ゆっくりと、サンジが怯えて逃げ出さないように。その一方で、宥めるようにエースの指先が、サンジの背筋を伝い上がり、肩口を辿って腕をおりていく。
「んっ…ん……」
  鼻にかかった声が洩れ、その度に体の熱が上がっていくような気がした。



  気が付くと、いつの間にかベッドに押し倒されていた。
  裸のままもつれあい、指と指とを絡め合い、キスを交わす。
  エースの体の熱が、サンジの体温をあげていく。
  クチュ、と湿った音がして、エースに股間の高ぶりを押し付けられた。先走りですでに濡れたエースのものが、サンジのペニスになすりつけられる。
「エー…ス……」
  サンジの声は上擦っていた。
  掠れた自分の声に驚きながらもサンジは、エースの指に絡め取られた自分の指を引き抜いた。自分の手よりも大きなエースの手は、熱を持っている。燻る炎を思わせるようなエースの体温の高さに、サンジは小さく笑った。
「なに?」
  問いかけるような眼差しは、熾火のように仄暗い、赤。
「……熱い。触れられたところ全部が熱くて、気持ちいい」
  正直にサンジが告げると、エースは大きく笑った。
「素直だな」
  チュ、と唇を合わせるとエースは鼻先でサンジの腹筋をなぞり、ペロリと腰骨を舐めた。エースの吐息がかかるだけで、サンジは全身が震えるのを堪えなければならなかった。
  陰毛の中で微かに震えるサンジのペニスはエースのものよりも一回り以上小さく、ほっそりとしている。それをエースの指がやんわりと弾いた。
「ぁ…っっ」
  思わずサンジの口から声が洩れる。
  慌ててサンジは片手で口元を覆った。こんなふうにいきなり、自分でも意識しないうちに声が洩れるとは思ってもいなかった。
  エースはニヤニヤと笑いながらもサンジのペニスをパクリと口に含んだ。
「ひっ……」
  膝を閉じようとサンジが足を動かそうとすると、エースの手が膝裏にするりと入り込み、足を固定された。上目遣いにサンジの顔をチラチラと見ながら、エースの口がゆっくりと上下する。
  エースの口の中は熱かった。竿の部分にエースの唾液が絡みつくと、サンジの体の芯がカッと熱くなる。体中、どこもかしこも熱かった。
「あ……熱……」
  はあ、と息を吐きながらサンジが訴えると、エースは顔をあげた。戸惑うようなサンジの目をじっと見つめ、エースはまた、笑った。
「まだ、熱くない場所があるだろう?」
  面白がるような、それでいて真摯な眼差しにサンジは言葉を返すことができない。
  わかっている。まだ、エースに触れられていない場所があることを、サンジは知っている。触れられたらきっと、そこも熱くなるのだろう。
「……うん」
  頷くと、よくできましたと言わんばかりに、エースはサンジの髪をガシガシと掻き乱した。



  ベッドの上で四つん這いになったサンジの尻に、エースは舌を這わせた。透明な唾液の筋がてらてらと光っている。手を、前へ回すとサンジのペニスは先走りを溢れさせていた。指の腹でグリグリと亀頭をなぞると、サンジの体が震え、ともすればベッドの上にくずおれそうになる。
「エース……」
  掠れた声は、欲情の証だろうか。
  白い双丘の挾間にひっそりと息づく部分に、エースはそっと舌を差し込んだ。
  ピクリとサンジの体が揺れ、それと同時に全身の筋肉が緊張する。それでもエースは、気に留めることもなく縁の皺を丹念に唾液で湿らせていく。
「あ……ぁ……」
  皺の内側へとエースが舌を差し込むと、内壁がピタリと閉じ合わさろうとしてまとわりついてきた。
「熱…っ……」
  啜り泣くような声がして、ふと見るとサンジの体が震えていた。
「いい子だ」
  呟いて、エースはサンジの内側で舌をくねらせた。前に回した手は、ゆるゆるとサンジのペニスを扱いている。痺れるような感覚が、サンジの体に広がっていく。
「はっ、ぁ……」
  だらだらと溢れ出すサンジの先走りを指で掬い取ったエースは、鈴口にそれを塗り込めた。膝に力が入らないのか、時折、カクン、とサンジの体が大きく揺れ出す頃合いを見計らって、エースは舌を引き抜いた。
  ズルズルと舌を引き抜かれる感触に、サンジの体が一段と大きく揺らいだ。ベッドに突っ伏して、今にも泣き出しそうな何とも情けない顔で背後を振り返って見ると、エースは穏やかな表情で微笑んでいる。
  その直後に、背後からエースがのしかかってきた。
  それだけでサンジの背中はカッと熱を持った。いや、もしかしたらそれはただ単にエースの体温を感じただけなのかもしれない。
  とは言え、体の中に穿たれるペニスの熱さに、サンジは思わず声をあげていた。
  自分では思い通りにならない熱に浮かされるかのように、シーツを握り締めて息を吐く。
  痛みのせいで、意識が遠くなっていく……。



  気付くと、サンジは背後からエースに抱き締められたまま、がっしりとした胸にもたれて座っていた。
「あ……?」
  目を開けて、サンジがもぞもぞと体を捩るとエースの唇が肩口に押し付けられた。
「熱っ……」
  ピクン、とサンジの体が小さく跳ねる。エースが唇を話すと、そこにはエースの歯形が赤くなって残っていた。自らつけた跡をペロリと舐めるとエースは、サンジの華奢な白い体をぎゅっと抱き締めた。サンジの手がエースの腕にしがみつく。
  チュ、チュ、とエースの唇がサンジの白い項を吸い上げ、耳元に移動してくる。
「──中に、出してもいい?」
  耳の中にそんな言葉を吹き込むと同時に、エースは下からサンジを突き上げた。
「ばっ……あ、ぁ……」
  ガシガシと腰を揺さぶられ、サンジは痙攣したように投げ出した足をカクカクとさせた。シーツを蹴る足先が勢いよく宙を蹴り、ぐい、と反り返る。
「エー…ス……」
  突き上げてくる力の強さに、サンジは眩暈を感じた。だらしなく開けたままの口の端から涎が零れ落ちる。しっかりとエースの腕にしがみついていないと体がバラバラになってしまいそうな感じがして、サンジはエースの腕に爪を立てた。
  カリカリとサンジがしがみついた腕を引っ掻くと、エースは不意に動きを止めた。
  エースはサンジの肩に額を乗せ、喉を鳴らしてクックッと笑った。
「くすぐったい……」
  耳元で、エースが呟く。
  それでも、サンジが息を切らしているのを見て取ると、すぐに動くことはせず、今度はゆっくりとサンジを追い上げにかかった。





To be continued
(H19.11.13)



                          


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