刹那の想い〜SANDCASTLE〜3
ゾロの身体を割り裂いて、灼熱の肉棒が中へと入り込んでくる。
無理矢理ではなかった。
少しずつゆっくりと、ゾロの呼吸に合わせてそれは入ってきた。
「ああ……きついな、やっぱり」
低く掠れた声で、サンジが呟く。感極まったようなその声色に、ゾロの身体の奥深くがきゅうっ、とサンジを締め付けた。
「辛いか?」
根本まできっちりゾロの中に押し込んでしまうと、ようやくサンジが口を開いた。
「あ?」
どこか虚ろな眼差しでゾロは、サンジの顔に焦点を合わせる。
「そんなに辛くは……」
言いかけたゾロの口をサンジは軽くついばむと、汗で濡れた前髪をくしゃりと掻き上げた。
「そんな顔するなよ。まるで……」
言いながらサンジは、ゾロの額にも唇を寄せる。ちゅっ、と音がして、ゾロは額からこめかみ、鼻の先に何度もキスされた。
「……まるで?」
朦朧とする意識を何とか保ちながら、ゾロが尋ねる。
「や、ちょっとな」
小さく苦笑すると、サンジはゆっくりと腰を揺らしはじめた。
内壁に沿って亀頭の部分でゾロの内側を擦り上げると、苦しいのか、低い呻き声がゾロの喉の奥から聞こえてきた。サンジにはそれが、甘く苦しい声に聞こえた。
「こっち向けよ」
そう言ってサンジは、ゾロの頬を指の腹でなぞりあげる。
「──…目を、閉じるな。そんな顔されると、こっちが……まるでこっちが、犯されてるような気分になる」
サンジの腕が、ゾロの片足を抱えている。
大きく足を開かされたゾロは、ベッドの柵に両手でしがみついていた。サンジのペニスが身体の奥深いところを抉るたびに内臓が圧迫され、吐き気がこみ上げてくる。眉間に皺が寄っているのだろうか。額から眉間のあたりにかけて、サンジの唇が何度も触れてくる。優しく滑らかな唇が額や眉間に触れるたびに、ゾロは身体の緊張を解いていく。ゾロの乾いてカサカサになった唇とは違う、しっとりと湿り気のあるサンジの唇は触れているだけで気持ちがいい。
「……まだ、犯されてるような気分か?」
不意に、ゾロがぽつりと尋ねかけた。
どこか不安そうな眼差しが、じっとサンジを見つめている。
急に何を言い出すのかと思いながらもサンジはにやりと口の端を吊り上げて笑い返した。
「そうだな」
言いながら、ゾロの唇を軽く吸った。
「ここの……」
と、するりと指を、ゾロのこめかみに這わせてサンジは言葉を続ける。
「深くて恐い皺がなくなったら、犯されているような気分も吹き飛んでしまうんだろうがな」
そう言われてゾロは、咄嗟に言葉を返していた。
「じゃあ、かわれよ」
「……は?」
言葉の意味がよく理解できなかったのか、サンジはきょとんとゾロを見つめ返す。今、自分が何を言われたのか、もしかしたら聞き逃してしまったのかもしれないと、サンジは全身で耳を傾けて、ゾロの言葉を待った。
「犯されているような気分になって集中できねぇんだろ? だったらかわれよ。俺が、お前を犯してやるから」
そうゾロが言うと、サンジは慌てて腰をぐいぐいと奥のほうへと押しつけた。
「阿呆か、てめぇは。馬鹿言ってんじゃねぇよ。俺は、てめぇの中に挿れたいんだよ。突っ込んで、引っかき回してアンアン言わせて泣かしたいんだよ!」
と、サンジは腰を大きく揺すった。ゾロの中でサンジのものがさらに固く張り詰める。圧迫感がゾロに、不快感と快感とをもたらした。
本当は少しも気持ちよくなんてなかったのかもしれない。
サンジが気持ちよさそうな表情をするのが見たかった。ただそれだけで、追い上げられればゾロは声をあげたし、大きく足を開いて、サンジの好きにさせてやった。
もしかしたら、相手に突っ込んで、引っかき回してアンアン言わせて泣かしたかったのはゾロのほうだったのかもしれない。ゾロが強く望んだから、二人は互いを求めるようになったのかもしれない。その過程でサンジもまた、ゾロと同じように相手に突っ込んで、引っかき回してアンアン言わせて泣かしたいと思うようになっただけだとしたら……。
仮にそうであったとしても構わないと、ゾロは密かに思った。
どちらにしてもゾロは、サンジとの肉体関係を望んでいる。抱くか抱かれるかの違いはあっても、サンジを欲していることにかわりはない。
今の自分のこの気持ちに、嘘偽りはこれっぽっちもないのだと言い切ることが出来る。
おそらくサンジもそうだろう。
戦いの間、離れていても互いに心配はしなかった。ゾロはサンジが、サンジはゾロが勝つだろうことを信じていたし、この戦いで仲間の誰かが負けるなどとは微塵も思ってもいなかった。
ほんの少しの時間、離れていただけだというのに。それでも仲間の顔を見た途端、安心した。麦藁海賊団の見慣れた顔ぶれが誰ひとりとして欠けることなく揃うのに安堵して、それまで押さえ込んでいた感情が表に浮き上がってきたとしても不思議はないだろう。
それとも。
互いに求め合うのはもしかしたら、戦いで興奮した身体の熱を鎮めるためなのかもしれない。
牡としての本能は、間違いなく互いを求めていた──
引き裂かれる痛みの向こう側には快感が待ち受けていた。
サンジがゾロの中で蠢くたびに、ゾロは身体を震わせた。ぎゅっ、と閉じたまぶたの縁に、うっすらと涙が滲みだす。
「くっ……ぅぁ……」
血管の浮き上がったゾロの腕は肉感的で、艶めかしい動きをしている。指で触れて隆起した筋肉を感じると、サンジはそのまま指を滑らせて胸の尖りをくりくりとこねくり回した。
「……ひっ……」
乳首の内側から、ピリピリとした痺れるような感覚がこみ上げてきて、ゾロは大きく首を横に振った。
「気持ちイイだろ?」
と、サンジはにやりと笑う。ふてぶてしいその態度にむっときたのか、ゾロはぎろりとサンジを睨みつけた。
「レディも野郎も気持ちイイところはたいてい一緒……だろ?」
言いながらサンジがゾロの乳首を捻り上げると、ベッドの上でゾロの身体が大きく弾んだ。
「ほらな」
満足そうにサンジは喉を鳴らした。それからゾロの胸の突起をペロリと舐めると、指と舌とでさんざん弄くりまわした。サンジの唾液でゾロの胸がしっとりと濡れると、ようやく顔を上げ、腰の動きを再開させる。出して、入れての繰り返しをしながら、少しずつ奥のほうへと深く突き刺し、内壁を強く突き上げていく。
「……なあ、どうしてほしい?」
息をあらげながらサンジは尋ねた。
「どんな風に犯されたいんだよ、ああ?」
どこか虚ろな眼差しで、ゾロはサンジを見遣った。
暗がりの中で見つめるゾロの瞳がほんのりと紅く、色づいて見えた瞬間のことだった。
to be continued
(H16.9.5)
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