『恋はトツゼン! 9』



  ともすれば畳の上に崩れ落ちてしまいそうなサンジの腰を、ゾロの片手がしっかりと抱えている。
  尻の奥で蠢く指は、腸へと続く奥深いところで溜まっていた残滓を掻き出していく。前立腺の裏を圧迫され、何度もサンジは声をあげた。腰が揺らぎ、勃起したペニスの先端から精液が溢れ出してくる。くちゅくちゅという音がしばらく続き、不意にペニスを握っていたゾロの手が離れていった。
「ひっ……ぁ……?」
  ちゃぷん、と水が跳ねた。サンジの腹の下に置かれた金だらいの水が、ほんの少し畳の上に零れる。
「あんまり動くなよ。水が零れちまう」
  と、ゾロは言うと、サンジのペニスをたらいの中に突っ込んだ。ひんやりとした冷たい水がサンジの熱を奪い取り、頭の中の理性を呼び覚まそうとした。
「畳の上にぶちまけられたらたまらんからな」
  それだけ言うとゾロは、再びサンジの竿の部分を握り締める。水の冷たさと、ゾロの手の温もりとが、サンジに奇妙な刺激を与える。腰がまた、揺らいだ。後ろの孔に潜り込んだ指はまだ、ごそごそと動いている。
「あ、ぁああっ……!」
  四肢を突っ張り、声をあげた。
  冷たいたらいの底にペニスの先端を擦りつけると、ひんやりとして気持ちよかった。
「イけよ、このまま」
  ゾロの声が耳元で囁く。
  首を横に振り、サンジは唇を噛み締めた。支えを失った腰が揺らぎ、崩れ落ちそうになる。
  ぐい、とゾロの指がサンジの中で大きく弧を描くような動きをし、たらいの水が大きく跳ねた。あっと思う間もなくサンジは水の中に射精していた。



  畳の上にごろりと仰向けに寝転んだサンジの下肢を、ゾロはそっと拭った。
  ごつごつとした手がサンジの身体を優しく清めていく。これだけ自分を翻弄しておいて、何故この男はこんなにも臆病な手つきをするのだろうか。サンジは口元に淡い笑みを浮かべると、ゾロをじっと見つめた。
  少しばかり眉間に皺を寄せて、真剣な表情で自分の身体を手拭いで拭いてくれているのは間違いなく男だ。背丈は自分とほとんどかわりがないが、横幅は鍛えられた筋肉のためか痩身のサンジよりも随分と厳つく見える。無愛想で、つっけんどんで……それなのに時々、愛想のない横顔に現れては消えていく奇妙な優しさ。
  ただ気になるのではない。
  自分はこの男に恋をしているのだと、サンジは感じた。
  たとえこの男に裏切られても構わないほどに、焦がれている。そう遠くない将来、自分はきっと、この男の妨げになるだろう。女は必要悪だと言うゾロにとって、恋愛は修行の妨げでしかないはずだ。こうして身体の関係を持ってしまった以上、いつかきっと自分の存在がゾロの修行の妨げとなる日がくるだろう。
  それが明日なのか、それとも十年、二十年先になるかはわからなかったが、ゾロの修行の妨げだけにはなりたくないとサンジは索漠と思った。もしも自分がこの男の修行の妨げになる日が来たなら、何も言わずに彼の前から姿を消すべきだ、とも。
  手を伸ばしてゾロの髪に触れた。
  軽く引っ張ると、ゾロは顔を上げてサンジのほうを見遣る。それから金だらいと手拭いを横へ押しやって、サンジの唇をそっと吸った。
「布団、敷くから……少し待ってろ」



  一枚の布団に大の男二人が潜り込むと、さすがに狭かった。
  二人は互いの身体に腕を巻き付け、相手の肌に軽く口付け合った。
  部屋の中は、明かりを消してしまうと真っ暗になった。唯一の光源は、カーテンの隙間から入り込んでくる一筋の月明かりだ。相手の顔をうっすらと識別できる程度の淡い光を投げかけている。
「お前、野郎は初めてか?」
  キスの合間にサンジが尋ねた。
  単なる思いつきだけで聞いているのではないらしいことに気付いたゾロは、サンジの胸の突起を甘噛みしながら返した。
「初めてに決まっているだろう」
「本当か?」
  疑うように畳み込むサンジの口調は、どこか怒っているように聞こえないでもない。
「本当だ。男に関してははお前が初めてだ」
  そう返すと、サンジはゾロの指を手探りで引き寄せ、噛みついてきた。
「痛っ……」
  舌でねっとりと指の股を舐め取り、関節の部分を唇で圧迫する。ゆっくりと、悪戯をしかける。ゾロの身体の中心へと向かって熱が集まりだす。
「嘘じゃないだろうな」
  身体をずらし、ゾロの上にのしかかるような体勢になってサンジは顔を覗き込む。
「嘘じゃねぇよ」
  短くゾロが返すと、サンジは気に入らないといった様子でぎろりと睨み付けてきた。
「まあ、いい。もしてめぇが俺に嘘のひとつも吐いてたなら、そん時ゃ、アイスピックでここを……」
  と、サンジの空いていたほうの手がもぞもぞとゾロの身体を這い、ペニスを指先で揶揄するようにつついた。ゾロのペニスはすぐに反応を返し、ピクン、と勃ち上がろうとする。
「俺様愛用のアイスピックで滅多刺しにしてくれる」
  にやり、と口の端をつり上げてサンジが笑うと、ゾロはその唇に指を押しあてた。
「穏やかじゃないな」
  そう言うとゾロは、サンジの身体を再び自分の下に敷き込んだ。



  布団の中に入ったものの、ゾロもサンジもなかなか寝付くことができなかった。
  結局、どちらか一方が相手を求め、片方がそれに応じるといったことを何度も繰り返して夜を過ごした。
  甘い時間だった。
  これ以上はないほどに。
  朝になってサンジが目を覚ますと、布団の中にゾロの姿はなかった。
  ゾロの寝ていた窪みはまだほんのりとあたたかいことから、起き出したのは今し方のことなのだろうとサンジは思った。どうしたものかとサンジは部屋の中をぐるりと見渡してみる。
  カーテンの隙間から入ってくる光が、少し眩しい。
  そうこうするうちに表のほうから水の音が聞こえてきた。勢いよく水を流した時のような音だ。音は不規則で、大きかったり小さかったりもする。いったい何をしているのだろうかとサンジは起きあがり、カーテンを開けて窓の外を覗いた。
  窓から首を出して左手を見ると、簡素な屋根がついた井戸があった。井戸の屋根を支える柱の上部に取り付けた滑車を利用して、ロープの先に括り付けられた桶で井戸の中の水を汲むらしい。その向こうには、母屋が見えている。
  見れば、ゾロは上半身裸で頭から水をかぶっているところだった。
  遠目にもはっきりとわかる胸の大傷。日焼けした肌。均整の取れた筋肉。井戸の脇に竹刀が立てかけてあるところを見ると、どうやら早朝稽古でもしてきたようだ。
  声をかけようかどうしようかと迷っていると、サンジの視線に気付いたのか、ゾロが腕を振り上げて叫んだ。
「おい、タオル持ってきてくれ!」






to be continued
(H15.11.8)



ZS ROOM

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