『恋はトツゼン! 16』



  甲高い音を立てて桶が転がる。
  しかしゾロはその音を一向に気にする様子もなく、何事もなかったかのようにサンジの窄まりを執拗に攻めてくる。
  くちゅくちゅと音がしているのは、さっきかけ湯をしたからだ。そこへ石鹸のぬめりも手伝って、湿った音がより大きく聞こえているだけだ。サンジは唇を噛み締めて、声が洩れないよう息を詰めた。
「声……出せよ」
  耳元でゾロが囁く。
「……っん」
  ピクン、とサンジの背が大きくしなった。
「お前の中、あたたかいな」
  と、ゾロは差し込んだ指の先でぐい、と内壁を引っ掻く。
「きつくて、かたくて……だけど、すげぇ、いい」
  そう言いながらゾロは、ぐりぐりと指を掻き回す。ゾロの指の腹が何度も前立腺の裏側の部分を往復し、そのたびにサンジの身体は、足は、ビクビクとなった。
「はっ……」
  あまり大きな声を出すことはできないと、サンジは心の中で自分に言い聞かせた。
  ここは母屋だ。いくらゾロ以外の人間の姿を見ないからといって、母屋に誰もいないとは限らない。たまたまサンジが見かけていないというだけで、実際には母屋には沢山の人がいるのかもしれない。
  それに。
  サンジ自身、ゾロに触れられるたびに淫乱になっていくようで、何となくいい気がしない。自分ばかりが最初から最後までずっと喘がされているような気がするのは、きっと気のせいではないはずだ。そう何度も身体を繋げたというわけでもないが、自分一人が流されてばかりいるような気がする。
「──あ……っ」
  尻の間でもぞもぞとしていた指がそろりと抜け出ていく。その排泄感に、サンジの腕にぞわりと鳥肌が立った。



  抜け出したと思った指が、今度は二本になってサンジの中に入り込んできた。
  背を反らすと、ゾロの厚い胸板が受け止めてくれた。時折、サンジの腰に押し付けられるのはゾロの高ぶりだ。
「ひっ……んんっ……」
  ぬちゅり、と湿った音がして、節くれ立った指が入り込んでいく。いつの間にかサンジのペニスは勃ち上がり、ゾロの手首のあたりでひくついていた。指が内壁を嬲り上げるたびにサンジの腰は揺らめいて、ゾロの腕に押し付けるように前へ、前へと突き出される。
「…ふ……ぅ……」
  爪先で床を蹴ると、尻の筋肉がいっそう強く指を締め付けた。中で蠢くゾロの指の感触からはどう頑張っても逃れられそうにもない。
  不安定な体勢に、縋るものを探してサンジは手を伸ばした。
  浴槽の縁が指に当たった。掴もうとして指先に力を入れたが、爪が引っかかって手は宙を切っただけだった。カクン、と体勢を崩しかけたサンジの身体を、ゾロが後ろから抱えるようにして腰のあたりに腕を回した。
「おっと、ここも洗っとかねぇとな」
  そう言うとゾロは、腰に回した手を胸へと這わせ、尖り立つ乳首をこねくり回してくる。泡のついた手で乳首の先をつつかれると、サンジの身体はそれだけで大きく震えてしまう。
  目尻にじんわりと滲んだ涙を零すまいと、サンジは唇を噛み締めた。



「苦しいのか?」
  耳元で、そっとゾロが尋ねかけてくる。生暖かい息が耳にかかり、ついでペロリと耳たぶを舐められた。
「んっ……」
  反射的に背がしなり、ゾロのペニスに腰を押しつけるような動きをしてしまった。腰から脇腹のあたりへかけてなすりつけられたヌルリとした感触は、ゾロの先走りの液だ。
「苦しいのは……そっち、だろ?」
  そう言うとサンジはくるりと身体をゾロのほうへと向けた。身体の中のゾロの指が、やんわりと内壁を引っ掻いて苦しい。上目遣いにゾロを見ると、噛みつきそうな勢いで唇に吸い付かれた。
「ふ……はっ…ぁ……」
  口付けを返しながらサンジは、ゾロの首に腕を絡ませた。サンジがしっかりとしがみついていくと、後孔を弄んでいたゾロの指がズルリと抜き出された。ゾロの手はそのままサンジの太股を撫で下り、脛のあたりをしっかと掴み上げた。
「こっち向けよ」
  キスの合間にゾロが囁く。
  ゾロの手に引き上げられた片足が、膝を跨ぐようにして床についた。ぐい、と引き寄せられ、ゾロの膝の上に座らされたサンジは戸惑いがちではあったが口元に淡い笑みを浮かべた。



  再びゾロが唇を合わせようとするのを遮るかのようにして、サンジはそのがっしりとした首にしがみついていった。
  少し尻を動かしただけで、二人のペニスがやんわりと擦れる。
  互いに性器をなすりつけ合いながら、キスをした。
  ぐちゅぐちゅという湿った音が浴室に反響する。恥ずかしいと思いながらもサンジはしかし、腰の動きを止めることが出来ないでいる。
  ゾロの肩口に額を押し当て、筋肉質な体にしがみついた状態でサンジは自らすすんで腰を揺さぶった。
  力の限りしっかりとしがみついていないと、ゾロがどこか遠いところへ行ってしまいそうな気がしてならない。今のサンジには、ゾロを引き止めておくだけの力などどこにもない。せめて自分が女であれば、それを理由に彼を引き止めることも出来たかもしれない。もっとも、女であることを楯にしたとしても、ゾロを引き止めることは万に一つの可能性もないに等しいのだが。
  首筋にかかるゾロの息が、熱い。
「……っ……く……」
  低く掠れた声でゾロは何事か呟くと、手を二人の間に割り込ませた。
「あ……あぁっ!」
  その瞬間、サンジはあられもない声をあげてしまった。ゾロの手が……節くれ立った太い指が、ゾロのものとサンジのものとをひとつにまとめて握り締めていた。
  ぬちゅり、と音がして、先端から溢れ出した先走りの液がゾロの手を汚していく。
  ゾロの手が上下するたびに白濁した液が溢れ、そのうちにどちらの精液かもわからなくなっていた。混じり合った精液はだらだらと垂れ落ち、陰毛を汚し、腹を汚した。
「あ、あ……はっ……」
  熱のこもったサンジの吐息が、ゾロの肩にかかる。くぐもった声でサンジは呟いた。
「──…やめてくれ」






to be continued
(H16.1.14)



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