甘く、深く5

  シンドバッドの指先がジャーファルの後孔に触れた。襞の縁に指をかけるとシンドバッドは指の腹でゆるゆると薄い皮膚を擦った。
  まだ媚薬が抜けきらないのか、ジャーファルの後孔はぐずぐずに解けて柔らかいままだ。指先を襞の真ん中に突き立てると、ヒクヒクと蠢き、シンドバッドの指を内へ飲み込もうと貪欲な動きを見せている。
「すごいな。まだいけそうだ」
  そうひとりごちるとシンドバッドは、そっと指をジャーファルの中へと押し込んだ。
「あっ……ぁ……」
  声を上げながらジャーファルがシンドバッドの背中に手を回すと、互いの身体がぴたりと重なる。ジャーファルの硬くしこった乳首が胸に擦れるのを感じて、可愛いなとシンドバッドは呟いた。
  広い浴槽の縁に腰かけたシンドバッドの膝の上でジャーファルは、ふるっと身を震わせる。
  二戦目に突入するのはやぶさかではないが、なんとなくよろしくない気配がしている。そもそも最初に器具や媚薬を使ったシンドバッドが、普通にジャーファルを抱くとは到底考えられないことだ。
  顔を上げてちらりとシンドバッドの表情を窺うと、意地悪く眇めた琥珀色の眼差しがじっとこちらを見下ろしている。
「なんだ、まだ足りないのか?」
  真顔で尋ねられて、ジャーファルはふるふると首を横に振った。身体の奥は微かに疼いていたが、我慢できないというわけではない。このままシンドバッドが余計なことをしないでくれるならば、静かに眠ることができるだろう。
「そうか」
  シンドバッドはわかったと大きく頷くと、ジャーファルの体を膝の上に抱え直した。
「まだするんですか?」
  慌て制止をかけようとすると、シンドバッドはニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべた。
「いいや」
  だったら何故、この男の手は自分の尻を撫で回しているのだろう。怪訝そうにジャーファルはシンドバッドの顔を覗き込んだ。
「では、もう触らなくても……」
「今夜はもうしないけれど、後始末をしないと駄目だろう」
  もっともらしいことをシンドバッドは告げてくる。確かに後始末は必要だ。だが、この男のこの目は、それだけですます気がないことを示唆していた。



  シンドバッドの膝の上に腹をつけるようにして抱き直されたジャーファルは、尻にかかった骨ばった手が襞の間に潜り込んでくるのを感じた。
  まだ中が濡れているため、指が突き立てられると同時にクチュ、と湿った音がした。ぞわぞわとした不快な感覚が腰から背中へと駆け抜けていく。
「あ……」
  一度は注ぎ込まれた白濁を今度は掻き出すため、二本の指が内壁を擦り、そこここで不自然に曲げ伸ばしされる。
「っ……く……」
  歯を喰いしばっていても、不快感は続いている。シンドバッドの指が出ていってくれない限りはこのまま我慢するしかない。ジャーファルは唇を噛み締めた。
  シンドバッドもこの行為につきまとう不快感に気付いているのか、淡々としたものだ。
「う、ぁ……」
  奥のほうまで差し込まれた指が、白濁を掻き出しながら入り口のほうへと下りてくる。浅いところにある瘤のような部分を男の指の関節に擦られ、ジャーファルの腰は自然に揺らいでいた。もぞ、と腰を動かすと、股間のものがシンドバッドの太股に当たる。この調子では今は萎えたままのジャーファルの竿に芯がとおるのもあっという間のことだろう。
「腰は上げとくんだ、ジャーファル」
  頭の上でシンドバッドの声がする。すぐ側にいるのに、どこか遠くから声が聞こえるような気がするのはどうしてだろう。
  クチュ、とまた淫音が響く。
  中を擦られ、掻き出され、喘がされた。
  今夜はもう抱かないと言っておきながら、事後処理の手はやけに淫らで執拗だ。
  たまらずにジャーファルは腰を揺らしていた。もぞもぞと腰を動かすと、さらに大胆に股間の竿がシンドバッドの太股に押し付けられ、多少なりとも快感が得られた。気付かれても構うものかと自分の気がすむように腰を動かすと、パシッと音がした。
「ヒッ……!」
  思わず喉の奥から妙な声が出た。
  すぐにジャーファルは、尻を叩かれたのだということに気付いた。
「こら。今夜はもうしないと言っただろう」
  艶のある声でそう告げられ、ジャーファルは恨めしそうにシンドバッドの顔を見上げた。
「でも……あなただって、少しぐらいはその気になっているじゃないですか」
  言いながらジャーファルは、シンドバッドの股間へと手を伸ばした。硬くなったシンドバッドの竿は、既に勃ち上がっていた。片手で竿を掴むとジャーファルは、仕返しとばかりにその手を上へ、下へと焦らすように動かしてみせる。
  先端を指の腹で擦ってやると、小さな孔にじんわりと先走りが滲み出てきた。
「ほら、ね?」
  竿を握りしめたまま、ジャーファルは勝ち誇ったような表情でシンドバッドを見上げた。
「……ふむ」
  思案顔でシンドバッドは頷く。
  それでも、今夜はもう体を繋げる気はないんだけどね、と呟いて彼は、ジャーファルの中に突き立てた指を激しく動かした。
「やっ、ぁ……」
  シンドバッドのものを手にしたまま、ジャーファルは後孔を攻められた。唇の端から淫らな声が上がり、腰が揺らぐ。身を捩らせながらも必死にジャーファルは手を動かした。意趣返しにすらならないことはわかっていたが、少しでもこの男を困らせてやりたかった。
  ジャーファルの手の中で、シンドバッドの竿が次第に硬く張り詰めていく。たらたらと先走りを零しながら、青臭いにおいを振り撒いている。
  腹の中の白濁を掻き出す指は意地悪で、気持ちのいいところにはなかなか触れてくれない。それなのに中を掻き混ぜ、クチュクチュという淫猥な音を響かせながらジャーファルを高めようとする。まるで、弄ばれているかのような感覚に、目尻にうっすらと涙が滲んだ。悔しいのともどかしいのと、そのふたつの気持ちがごっちゃになって、どうにもたまらない。
「ああ……いやっ、そこ……」
  もぞもぞと腰を動かし、シンドバッドの指が気持ちのいいところを擦ってくれるのを待ち受けるが、ジャーファルの真意に気付いているのか彼はなかなかいいところに指を当ててくれない。
「駄目だよ、ジャーファル」
  しれっとそんなことを言いながらもシンドバッドは、次の瞬間にはジャーファルが焦れて身悶えするような微妙な箇所に触れてくる。
「や、め……」
  ジャーファルの手の中でドロドロに熟れたシンドバッドの性器は、今にも爆ぜてしまいそうだ。竿の側面に浮かび上がった血管がピクピクとなり、濃く青い性のにおいを放っている。
  思わずジャーファルは、手の中の竿にむしゃぶりついていた。ぱくりと口の中に含むと舌を絡め、強く吸い上げる。口角を絞り、きゅっと竿を吸うと濃い先走りの味がじゅわっと口の中に広がる。
  と、その刹那、ジャーファルの尻がまたもやパン、と音を立てた。
「ん、あ……っ!」
  ヒリヒリとした痛みと、潜り込んだ指が叩かれた衝撃でわずかに蠢く感触に、ジャーファルは甘やかな声をあげた。
「なんだ、叩かれて善がっているのか?」
  シンドバッドはそう尋ねながら、二度、三度とジャーファルの尻を打った。パン、パン、と小気味良い音があたりに響き渡る。打たれるたびにジャーファルは腰をくねらせ、シンドバッドの太股に自身の竿を押し付けた。
「駄目っ……」
  小さく掠れる声で、ジャーファルは何度もそう呟いた。
  合間にシンドバッドの竿をきつく吸い上げたり、頬をすりよせたりしては甘えるような声をあげ続ける。
  そのうちに、太股に押し付けた竿の先端からトロトロと先走りが零れ始めた。ヌルヌルになった太股に竿全体を押し付け、腰を揺らすと背徳にまみれた快感がジャーファルの身体を駆け巡った。
  それを知ってか知らずしてか、シンドバッドは何度もジャーファルの尻を打つ。白い肌が赤らみ、ヒリヒリとした痛みを放つ頃には尻は微かに腫れていた。しかしそれすらも快感と認識してしまうほどに、ジャーファルの身体はグズグズに熔けてしまっていた。
  力の入らない手でシンドバッドの竿を握り、手を上下させる。先走りでヌルヌルになった先端に舌を這わせ、チロチロと舐めるとより強い力で尻を打たれる。そうすると、中に潜り込んだ指が思わぬところを内壁を擦り、よりいっそうもどかしい快感がジャーファルの身体の中に火を点す。
「んっ、あっ、あ……!」
  シンドバッドの竿にしゃぶりついたままジャーファルは、自身の先端から白濁を溢れさせていた。
「なんだ、一人だけ気持ちよくなって。狡いぞ、ジャーファル」
  少しムッとしたような声でそう言うとシンドバッドは、さらに強い力でジャーファルの尻を叩き始めた。パン、パン、と音が響き、ジャーファルのあえかな善がり声がそれに重なる。
  腹の底のムズムズとした感じと熱は、まだ引かない。それどころか、シンドバッドの手が尻たぶを打ち付けるたびにジャーファルの身体はますます昂っていき、気持ちよさが増していく。
「や……ああ、ぁ……」
  激しく腰を揺らすと、前はシンドバッドの太股に押し付けられ、擦れて気持ちいい。後ろの孔に潜り込んだシンドバッドの指が大きく孔を広げたり、指を曲げて残滓を掻き出そうとする指使いに翻弄されながらジャーファルは、尻を叩く手にも感じていた。
「やっ、も……ムリっ……」
  空いているほうの手でシンドバッドの太股を掴み、爪を立ててジャーファルは腰をガクガクとした揺らした。
  シンドバッドはさらに大きく手を振りかざし、ジャーファルの尻を強く打つ。
  一際大き中に音が響くと、ジャーファルはシンドバッドにぎゅっとしがみついたまま動かなくなった。いや、そうではない。動けないのだ。少しでも動いたら、粗相をしてしまう。そんな張り積めた状態に、息をするのも苦しそうだ。
「ジャーファル?」
  尻を打つ手を止め、シンドバッドは声をかけた。
  しかし後孔に潜り込んだ指は、まだ激しく中を掻き混ぜている。
「ぁ…く、ぅ……」
  中を引っ掻く指がごり、と瘤になった敏感な部分を強く刺激すると、とうとうジャーファルはか細い声を途切れ途切れに溢しながら、陰茎を震わせた。間もなくしてショロショロと言う音と共に、シンドバッドの太股は生暖かい小水にまみれてしまった。
「あっ……あ、ぁ……」
  恥ずかしそうに目元を赤らめたジャーファルの顔は、ひどく扇情的だった。これまで目にしたことのない色香を放っている。シンドバッドがゴクリと音を立てて唾を飲み込んだ。喉が上下する様子を、ジャーファルはぼんやりと見つめていた。
「……シン」
  名前を呼ぶとシンドバッドは不意に我に返ったかのように、ジャーファルの髪を鷲掴みにした。
「舐めて」
  乱暴な仕草でシンドバッドは、ジャーファルの顔に自身の性器を押し付けた。硬くなり、先走りでてらてらと黒光りするもので頬を軽く打たれたかと思うと、いきなり口の中に竿を押し込まれた。
「……舐めて、ジャーファル」
  優しい口調の命令に、ジャーファルは従った。
  口の中の性器に舌を這わすと、前歯をあてがって甘噛みしたり、唾液を絡ませて竿の側面を吸い上げたりした。
  シンドバッドの指はまだ、ジャーファルの後孔にとどまっている。骨ばった指がジャーファルの中を掻き混ぜるたびにグチュグチュと湿った音がしている。
「んっ、んん……」
  竿の先端、に舌を這わすとジャーファルはカリの部分を丹念に舐めた。それから先端へと移ると、今度は尿道口を舌の先で抉るように啜った。
  そのうちに、シンドバッドの手がジャーファルの髪を掴んできた。荒々しくジャーファルの頭が前後に揺さぶられ、太くて硬いシンドバッドの竿の先が喉の奥を何度も突く。えずきながらもジャーファルは、その乱暴な手を好ましく思っている。
  いたぶられたいわけではなかったが、こんなふうに扱われることでジャーファルは自分が失禁したことを忘れられそうな気がした。いや、もう既にシンドバッドの前で便を垂れ流しているのだから、恥ずかしがるのも今更なのかもしれなかったが。
「んっ、ん、ぐ……ぅ……」
  激しい吐き気が込み上げてきた。
  苦しそうに顔を歪めたジャーファルの頬に、シンドバッドの手が伸びてくる。
「……ジャーファル!」
  上擦ったシンドバッドの声は、明らかに欲情していた。
  好いた男に触れられて嬉しいのに、顔は苦痛で歪んでいる。ジャーファルはさらに激しく口の中に性器を押し込まれた。青臭い苦味が口の中いっぱいに広がり、息をする余裕すら与えられない。苦しくて、目尻から涙が零れた。それから、鼻水もだ。涙と鼻水とでドロドロになってもジャーファルは、必死になってシンドバッドのものを舐め続けた。息苦しさに口を開けると、シンドバッドのものが口から抜け出てプルン、と大きく震えた。頬に竿が当たる。唾液と先走りに濡れたものが頬を擦り、次の瞬間、ドクッと脈打った。勢いよく放たれた白濁がジャーファルの顔を汚し、青臭いにおいにまみれる。
「あ、あ……」
  シンドバッドの指はジャーファルの中を焦らすように中を擦りながら、ずるりと引き抜かれていった。
  甘く痺れるような感覚の中でジャーファルは、達することのできなかったもどかしい快感に、身体を震わせていた。



(2016.6.24)


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