『TANGIBLE 5』
身体の下では、サンジが身体をひくつかせていた。
もうひとりのサンジはゆっくりとゾロの舌を吸った。甘い唾液がゾロの口の中に流し込まれる。ゾロは腰を大きく揺さぶると、床に這いつくばったサンジの中に精を放った。痺れるような感覚が下腹の奥の方で続いている。
「なあ、俺にもくれるんだろう? こいつにやったのと、同じものを」
期待に満ちた眼差しのサンジが、じっとゾロを見上げている。
ほんの少しだけ考えるふりをしてから、ゾロは返した。
「お前は……どれぐらいのことをしてくれるんだ?」
「ああ?」
間髪入れずに怪訝そうな顔をしたサンジの髪を鷲掴みにした。ぎろりと睨み付けると、サンジは嬉しそうにゾロを見つめる。
「何だってお前の言うとおりにしてやるよ。なんなら、その竿をきれいにしてやろうか?」
まだ、サンジの中に入ったままのペニスにちらと視線をやり、もうひとりのサンジは言い放った。
「じゃあ、そうしてもらおうか」
そう言うとゾロは、サンジの中からペニスを抜き出す。ゴプッ、と音がして、中にはなった精液がサンジの尻の穴から溢れてくる。
「……みっともねえ」
忌々しそうに舌打ちをすると、もうひとりのサンジはゾロの身体を押し倒した。
二人とも、息を切らして床に崩れ落ちたサンジのことなどこれっぽっちも眼には入っていないようだった。
床の上に仰向けになったゾロのペニスを口に含む。
くちゅくちゅと音を立てて口全体でしゃぶりあげると、気持ちいいのか、ゾロは眼を閉じてサンジの髪を掴んできた。両手でがしりとサンジの頭を固定すると、ぐいぐいと自分の股間に押しつけていく。
「歯を立てるなよ」
少しきつめの口調でゾロがそう告げると、サンジは口の中いっぱいにペニスを含んだまま頷いた。時折、サンジの口から洩れてくる少し鼻にかかったような甘えた声が、ゾロの竿に小刻みな振動を与えている。
「んっ……ん…む……」
ちゅぷ、ちゅぷ、と湿った音が格納庫に響いている。
サンジの指先は奔放で、ゾロの玉袋を揉みしだき、そのまま裏筋を辿って尻のほうまでのびていく。悪戯っぽく指先でゾロの後孔の入り口をつついたかと思うと太腿をなでさすり、そのまま口に入りきらなかった竿を愛撫する。ゾロの息が次第に上がっていく。堪えきれずにゾロが喉の奥で低く唸ると、顔を上げてサンジはにやりと笑った。満足そうな笑みを浮かべて、舌先でゾロのペニスをつついてみる。
「もう、出そうだぜ?」
そう言ってサンジは唇でゾロのペニスを挟み、ゆっくり喉の奥へと飲み込んでいく。
ひきつれるような痛みと快感が、ゾロの一点に集中している。喰われてしまうのではないかという恐怖にも似た何かが、ゾロの中で膨張し、それから素早く弾け散った。
ジュルジュルとエロティックな音を立てながら、サンジは精液を飲み干していく。口の中に収まりきらなかったぶんが顔にかかってしまったらしい。白い精液をトロリと頬に伝わせて、サンジは必死になって精液を喉の奥に流し込んでいた。
その姿がゾロの眼には、酷く無理をしているように映った。
何故、そう思ったのかは今もってまだわからないが。
「さて、次はこっちの具合を調べさせてもらおうか」
上体を起こしたゾロはそう言うと、サンジの腕をそっと掴んだ。
「俺は、そこでぶっ倒れているやつなんかよりずっと巧いぜ?」
挑発的に見つめられ、ゾロは憤りを感じた。これが、いつものサンジの言動であったなら、ゾロも気にはならなかったはずだ。いくらサンジと同じ顔をしていても、やはり目の前の彼はサンジとは異なる存在のものなのだろうか。
腹立たしさからゾロは、サンジを乱暴に組み敷いた。カタン、と音を立てて倒れ込んだ床の上で、サンジはこれが当たり前であるかのように何も言わず、じっとゾロを凝視している。
違和感を感じてゾロは、こっそりと溜息を吐いた。
いくら姿形がサンジとうり二つといえども、違う部分がありすぎる。目の前のこの男は、サンジではない。いや、この男がサンジなどであるはずがない。
ゾロはぐい、とサンジの足を抱え上げると、胸につくように押しつけた。目の前のサンジが平然としているのを目にすると、それだけで知らない男を抱いているような気がして気分が盛り下がってしまう。だからゾロは、敢えて目の前のサンジの顔は見ないようにした。ほっそりとした、しかししっかりと筋肉のついた身体だけを見て、その色白の肌だけに集中しようとした。
胸元に押しつけたサンジの足をぐい、と左右に大きく開いた。言葉をかけることもなく、既に濡れそぼっているペニスにちらりと目を馳せてから、後孔を指で貫いた。
「っ……痛っ……」
足を閉じようとサンジが動きかけたのを見て、ゾロはすかさずペニスを口に含んでいた。
口全体を使って、激しく動かしてやる。唇も、舌も、何もかもを奪い尽くすのに必死だ。カリの部分をきつく吸い上げると、サンジは小さく痙攣して身体中の筋肉を緊張させた。
「あっ……あ、あ……ひっ……」
ピクン、と一際大きく身体を反らすと、サンジは呆気なく果ててしまった。
「なんだ、もう終わりか?」
淡々とゾロが呟く。
射精の瞬間にゾロが身体をはなしたせいで、サンジの腹の上には白く濁った精液溜まりが出来ていた。まるで犯されたような惨めな様子だったが、ゾロは気にかけることもせず、開いた足の間に腰を押し進めていく。
「ああ……熱い……割けそうだ……」
うわごとのようにサンジが繰り返し、ゾロの背に腕を回そうとして手をさしのべてくる。ゾロはその手を避けるようにして身体をはなした。
あたりには血のにおいがしていた。
汗と、精液と、それから血の入り交じったにおいだ。
慣らすこともなくゾロの肉棒を突き入れられたサンジの後孔が裂け、いつしか太腿には血が伝い流れていた。
それでもゾロはサンジを気遣うこともせず、ただ力任せにがしがしと腰を抜き差ししている。
気持ちがいいからしているというわけではなかった。ただ、目の前にこの男がいるから。サンジを苦しめる、もうひとりのサンジに、虫酸が走るから。サンジ自身がもうひとりのサンジと対峙するべきだということはゾロも承知の上だったが、それでも、こうやって自分に取り入ろうとするもうひとりのサンジに、ゾロは言いようのない怒りを覚えた。
ふと見るとサンジのペニスは萎えていた。痛みだけしか与えないゾロのやり方にも文句ひとつ言うことなく、サンジは耐えている。
いや、違う──と、ゾロは思った。
このサンジは、これを正統な扱いと思っているのだ。
痛みに歪む表情の奥には、どこか誇らしげな色が混じっていた。この行為に耐えることで、本当のサンジになることができるとでも思っているのか、もうひとりのサンジは唇を噛み締め、ゾロにされるがままになっている。
「はっ、はっ……は……」
どちらからともなく、次第に息が荒くなってくる。
ゾロは、後孔の中にペニスを出し入れするだけの単純なピストン運動を繰り返した。絶対に気持ちよくなることのない、条件反射のような射精感に反吐が出そうだ。
ぐいぐいと前立腺の裏側を擦り上げるとゾロは、素早くペニスを引き抜いた。じゅぷり、と音がして、血と精液のにおいがいっそう強くあたりに漂う。
白濁した迸りが、サンジの尻から股間を汚していった。
to be continued
(H16.8.6)
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