揺れる |
「あ……」 咄嗟のことに、掠れた声しか出なかった。それほどまでに驚いたのだ。 「おや。歓迎して抱きついてはくれないのですか」 |
10年後 |
果ての想い |
「頭痛は治りましたか?」 物知り顔で尋ねる骸が、腹立たしい。 「そんなにすぐに治るわけがありません」 |
10年後 |
ベッドの中では |
「ほら、やっぱり。本気で逃げようとしていないじゃないですか」 そう言った男が憎らしくてならない。 フゥ太は目の前の男を小さく睨みつけた。 |
10年後 |
それは、嘘 |
「まったく、可愛らしい嘘をついてくれるんですね、君は」 男の指先がするりと移動し、フゥ太の唇をつつく。 逃げるようにしてフゥ太は体をもぞもぞと動かした。 「……嘘なんかじゃない」 |
10年後 |
噛みつく、キス |
「今日ぐらいはおとなしくしてようと思ったのに」 と、唇を尖らせた途端に男の唇が額に降りてくる。チュ、と小さな音を立てて、くちづけられた。 |
10年後 |
夢よりも |
「本当に、最後まで……」 言いかけたフゥ太の唇を、骸の指先がやんわりと押さえる。 「最後までして欲しいと言ったのは君ですよ、フゥ太」 |
10年後 |
唇を見ていた 1 2 |
「あなたと愉しむことが苦痛なんだ」 フゥ太は告げた。 優しい唇を思い出すから。肌を辿る指遣いや、甘い声、あたたかな体温を思い出すから、だから嫌なのだ。 |
10年後 |