2012年
揺れる 「あ……」
  咄嗟のことに、掠れた声しか出なかった。それほどまでに驚いたのだ。
「おや。歓迎して抱きついてはくれないのですか」
10年後
果ての想い 「頭痛は治りましたか?」
  物知り顔で尋ねる骸が、腹立たしい。
「そんなにすぐに治るわけがありません」
10年後



2011年
ベッドの中では 「ほら、やっぱり。本気で逃げようとしていないじゃないですか」
  そう言った男が憎らしくてならない。
  フゥ太は目の前の男を小さく睨みつけた。
10年後



2010年
それは、嘘 「まったく、可愛らしい嘘をついてくれるんですね、君は」
  男の指先がするりと移動し、フゥ太の唇をつつく。
  逃げるようにしてフゥ太は体をもぞもぞと動かした。
「……嘘なんかじゃない」
10年後
噛みつく、キス 「今日ぐらいはおとなしくしてようと思ったのに」
  と、唇を尖らせた途端に男の唇が額に降りてくる。チュ、と小さな音を立てて、くちづけられた。
10年後
夢よりも 「本当に、最後まで……」
  言いかけたフゥ太の唇を、骸の指先がやんわりと押さえる。
「最後までして欲しいと言ったのは君ですよ、フゥ太」
10年後
唇を見ていた

    
「あなたと愉しむことが苦痛なんだ」
  フゥ太は告げた。
  優しい唇を思い出すから。肌を辿る指遣いや、甘い声、あたたかな体温を思い出すから、だから嫌なのだ。
10年後



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