『愛は、キマグレ! 4』



  飢えたように、サンジはゾロのペニスをしゃぶり続ける。
  唇で挟んで先端をきつく吸い上げたかと思うと、竿の部分に頬をすりよせ、舌先で筋ばった部分をちろちろと舐める。
  くぐもった声がゾロの口から洩れるのを耳にして、サンジは自分の股間へ手を伸ばした。既に先走りでじんわりと湿っていたモノを、下着の中から取りだして扱きだす。
「あとで文句言うなよ」
  掠れた低い声でそう呟くと、ゾロは襟元から手を忍ばせ、サンジの素肌に指を這わせた。薄っぺたな胸の尖りを指の腹で押し潰すと、サンジの口がきゅっ、とゾロを締めあげる。
  車の中には湿った音と青臭いにおいだけが広がっていく。
  ちゅぷ、と音を立てながらサンジは、ゾロのペニスをしゃぶった。口全体で竿を扱き、裏筋を舌でつつくと、ゾロが押し殺した声を洩らすのが聞こえてくる。根元をきゅっ、とくわえて軽く歯をあてがうと、竿がビクビクと震えているのが感じられた。
  何度か唇を滑らせたサンジは最後に、反り返って腹につきそうになったゾロの竿をぐっと喉の奥に飲み込んだ。きつく吸い上げると、ペニスはさらに固さを増した。唇の端からたらりと零れ落ちた唾液には、ゾロの先走りが混じっていた。
「んっ……」
  口の中でビクン、ビクン、とゾロのペニスが大きく震えて、動きが鎮まったと思った途端、射精が始まった。
  えぐみのあるドロリとした青臭いものがサンジの喉の奥に叩きつけられ、すぐに口の中いっぱいに溢れかえった。それをサンジは、丁寧に飲み干していく。ちゅう、と吸い上げて尿道口の中の残滓まで舐め取ってしまうと、サンジはようやく顔をあげてゾロにニッと笑いかけた。
「こんなに濃いのを飲んだのは、初めてだ」
  言った瞬間、ゾロは眉間に皺を寄せてサンジをまじまじと見た。
「お前、そういうこと素で言うなよ」



  車の中の狭さが、サンジの何を煽ったのだろうか。
  ボトムから片足を引き抜いたサンジは、躊躇うことなくゾロの太股に腰を下ろした。
「やっぱり狭いな」
  天井に手をついてそう言ったサンジは、どこか楽しそうに苦笑する。
  尻をぐいぐいとゾロに押し付けながら、唇を合わせた。薄暗くなってきた車の中で、ペロリと舐めた舌先が、赤くちろちろと踊っていた。
「なあ……早く挿れねえと、襲っちまうぞ」
  そう言うとサンジは、勃ちあがったゾロの性器の上に尻をすり寄せる。
「誰が、誰を襲うって?」
  白い肌にゾロが手を這わすと、サンジの体が微かに震えた。ゆっくりと背がしなり、腹筋がピクピクと痙攣しているのがぴたりと押し当てた皮膚を伝って感じられる。
「俺が、お前を…──」
  喉を鳴らしてサンジは告げる。
  意趣返しのようにゾロは、サンジの尻の窄まったところに指を軽く押し込んだ。
「ぁっ……!」
  息を潜めて、サンジは咄嗟に異物感をこらえた。
  してやったり顔のゾロは、ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべてそんなサンジを見つめている。
「襲われるほうにしとけよ、お前は」
  掠れたゾロの声は、優しかった。
  離れている間、聞きたい聞きたいとサンジが切望していた、この、声。
  手を伸ばして、ゾロの頬を両手で包み込む。ゆっくりと唇を合わせると、互いの体温が感じられた。うっすらと唇を開いてゾロの舌を誘い込むと、サンジは強く吸い上げた。
  離れられないと、そう思ったのは、サンジだったかゾロだったか。



  シートの上で抱き合うと、否が応でも密着度が増す。
  男二人がせせこましい車の中でいったい何をやっているのだろうと、サンジは苦笑した。
  それでも、この密着感がいい。ピタリと肌と肌とをくっつけて、互いの体に腕を絡め、唇を合わせる。体の中に潜り込んできたゾロの指よりも太いものが欲しくて、サンジは腰をもぞもぞと揺らした。
  まるでそれを待っていたかのように、中でゾロの指が折り曲げられる。内壁をぐいぐいと圧迫しながら指が引き抜かれていく感覚に、サンジは切羽詰まったような獣じみた声を喉の奥から洩らしていた。
「早くっ……中……」
  口の端からたらりと涎を垂らしながら、サンジは懇願する。焦らすようにゾロの手が、サンジの中から引きずり出されると、白い肢体がビクビクと震えた。
  まるで拷問のようだとサンジは思った。
  覚束無い手つきでゾロの性器に指を這わすと、サンジは自分からその上に腰を下ろした。背をアーチ型に丸めて下腹部に力を入れると、きゅっと窄んだ部分に太い楔が潜り込もうとしてくる。
「ぁ……」
  腹筋がピクピクと蠢き、それに気付いたゾロの手が、サンジの性器へと伸ばされる。
「そんなに焦んな」
  耳元に、掠れた声が囁きかける。
「んっ……あ……」
  入らねえ。毒づいてサンジは、心持ち足を広げた。狭いシートの上で限界に近いところまで足を広げ、ゾロのペニスを飲み込むため、腰をゆるゆると動かした。窄まった部分に、先走りが塗り込められていく。
「は、んぁ……っっ…──」
  くっ、と力を込めて、サンジは腰を落とした。



「熱ちぃ……」
  呟いたサンジは、ゾロの頬を両手で包み込んだ。
「中が、熱ちぃ」
  そう言うとゾロの唇をペロリとひと舐めし、口の中へ舌をねじ込む。
  舌と舌とを絡めると、クチュ、と湿った音がした。
  久しぶりの行為に、体がこれまでにないほどに火照っている。初めての時ですらおそらく、こんなに体が熱くなることはなかったはずだ。
「ゾ、ロ……」
  筋肉質な体にしがみついて、サンジは男の体臭を鼻いっぱいに吸い込んだ。
「ゆっくり、な」
  乱れた呼吸を整えながら、サンジが告げる。
  わかっているとばかりにゾロは、サンジの口元に軽く唇を寄せる。
  しばらくの間、唇で触れるだけのキスを二人で交わし合った。
  眩暈を起こしそうな熱に、サンジは浮かれていた。自分の体をゾロのものが貫き、内部でピクピクと震える感触が伝わってくるたび、深い溜息を吐いた。
「もっと……もっと、食わせろ」
  不意にゾロを睨み付けると、サンジは快楽を追いかけ始めた。汗に濡れた前髪の向こうで、貪欲な色の眼差しがゾロを真っ直ぐに見つめている。
「中に、出してえ」
  ぽそりとゾロは囁くと、サンジの腰を鷲掴みにした。
「んっ……」
  ガシガシと揺さぶられると、サンジのペニスがゾロの腹にあたってだらだらと溢れ出した精液が互いの陰毛に降り注いだ。
「ぁ……やっ……」
  鼻にかかった甘えるような声でサンジが小さく喘いでいる。
  目の前が真っ白になりそうだ。
「……嫌か?」
  尋ねられ、サンジは大きく首を横に振った。男のものが欲しかった。腹の中を満たすのは、目の前の男の精液だけだ。
  しがみついてくる汗ばんだ体を片手で支えると、ゾロは激しく突き上げ始めた。
  サンジの嬌声が次第に大きくなり、途切れ途切れに車の軋む音が耳に聞こえてくる──



  車の中の饐えたにおいは、窓を開け放つことでやり過ごした。
  先ほどからサンジは、口もきかずに煙草を吸い続けている。
  いったい何が悪かったのだろうかと、ゾロは助手席でボンヤリと、そんなサンジの後ろ姿を眺めていた。
  久しぶりに体を繋げたところまではよかった……はず、だ。
  潤んだ瞳でサンジは、何度もゾロの名前を呼んだ。あんなふうに甘い声で名前を呼ばれることがあるということさえ、忘れていた
  二度、三度と突き上げると、それだけでサンジは感極まったような声をあげ、簡単に果ててしまった。
  車の中で行為に及んだことを怒っているわけではないだろうと、ゾロは思う。もしそうなら、もっと早いタイミングでサンジは怒っているはずだ。
  どうしたものかとサンジの後ろ姿をじっと眺めていると、華奢な肩先が小さく揺らいだ。
  くるりと振り返ったサンジの眼差しは、疑いの色を含んでいる。
「なあ。さっきの……道場で会ったあの男、本当に何もないんだよな?」
  唐突に、サンジが問いかける。
  いったい何を言い出すのかとゾロが呆気にとられていると、煙草を吸い終わった男がつかつかと近寄ってきた。
「俺がいない間、あの男と妙なことしてなかっただろうな、って訊いてんだよ、俺ァ」
  いつもより低い声で、サンジが言った。





to be continued
(H20.4.15)



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