『愛は、キマグレ! 6』
勃起したゾロの赤黒いものに唇を寄せる。
舌先でちろちろと先端を舐めると、竿の側面に浮かび上がった筋がピクピクと震えるのが感じられた。
ビロードのように滑らかな亀頭をベロリと舌で舐め上げ、尿道口を吸い上げると、ゾロの息づかいが大きく乱れた。
「……中に、挿れさせろよ」
眉間の皺をいっそう深くしてゾロが掠れる声で囁くと、サンジはすぐに顔を上げた。
「これ、使おうぜ」
そう言うと、先ほどから物色していたラテックスをひとつ取り上げて、ゾロの目の前で封を切る。シリコン臭に混じって、いかにも作り物ですといった感じの安っぽいパイナップルのにおいがする。一瞬、顔をしかめたものの、すぐにサンジはそれをゾロの性器に被せた。
「ゴムくせぇ……」
小さく呟いてサンジは、シリコン臭のにおいのする竿をパクリと口の中に招き入れた。パイナップルのにおいが口の中いっぱいに広がって、何とも言えない味になった。
「ん……やっぱ、ナマのほうがいいな」
ぷは、と口を離すと、サンジはぽつりと呟く。
ラテックスの人工の味だとか紛い物の感触には、いまだに慣れない。
もちろん、なにもつけないままのあの青臭いえぐみや苦みのほうが好きなのかと尋ねられたら、好きではないと返すだろう。しかし、人工の感触よりも、生の感触のほうがはっきりと繋がっているような感じがして、サンジは気に入っていた。
チュ、と音を立てて竿を吸うと、ゾロの呼吸がさらに乱れた。
「早く挿れさせろ」
珍しく余裕のない様子でゾロが口走る。
サンジは顔を上げるとニヤリと口元に笑みを浮かべた。
意地の悪い笑みだとゾロは思った。
サンジがこういった表情をする時は、概してよくないことを考えている時だ。
ニヤリと笑った口をあんぐりと開けるとサンジは、ラテックスに包まれた性器をさらに深くくわえた。
湿った音を立てながら、サンジは見せつけるように性器をしゃぶる。片手で袋の部分を揉みしだきながら、ゆっくりと頭を動かした。舌をちらちらと見せつけながら竿を舐めあげると、ゾロがごくりと唾を飲み込む音が聞こえてきた。
その音を耳にしたサンジはふと口を離して上目遣いにゾロを見上げると、ぽそりと尋ねた。
「このまま出したら、どうなる?」
「あ?」
何を言っているのだろうとゾロが怪訝な顔をすると、サンジは意地の悪い笑みを浮かべた。
「アンタの、イッた瞬間が見たい」
上擦ったサンジの声は、欲情の現れだろうか。
ぎょっとしてゾロは、わずかにサンジから身を離す。
「逃げるなよ。このまま、イかせてやるから」
サンジの目が、嬉しそうに細められた。
煽るように舌をちらちらと蠢かし口の端から覗かせる。その艶めかしさに、ゾロの眉間に大きな皺が寄る。
「もう、いい……いいから、サンジ……」
掠れた声でゾロが訴える。しかしその一方でゾロは、サンジの頭をぐい、と片手で固定すると、喉の奥を突き上げるかのように腰を揺さぶった。
「んっ……ぐ、ぅ……」
口の中いっぱいにシリコン臭が広がり、それと同時に喉の奥を突かれてサンジはえずいた。シリコン臭に、吐き気がした。自分が求めているものとは似てもにつかないにおいだ。
口の中を犯す竿が、いっそう大きくサンジの喉を突き、ゾロの動きが次第にゆっくりしたものへとかわっていく。口の中でピクピクと蠢いていたものが勢いをなくしていく。いつもなら口の中いっぱいに広がっていく青臭いようなえぐみのある味がしないことにサンジは物足りなさを感じた。
口の中の竿に軽く歯をあて、ラテックスの端を探しあてると、ゆっくりと引きずり下ろした。
ラテックスから溢れ出した精液が、口の中に零れ落ちる。
ぐい、と歯でシリコンを引っ張ると、中に溜まっていた精液がだらだらとサンジの口から顎にかけてを汚した。待ち望んでいた味が口の中を満たしていく。
「お前、何やってんだ」
呆れたようにゾロが言う。
ちらりとサンジはゾロへと視線を向けたものの、拗ねたようにすぐに目を逸らした。顎から胸元へと伝い落ちた精液が、何とはなしに気持ち悪い。物足りなさを感じた一方で、やはり、こういうことになると気持ち悪いと思う自分がいる。
「うるせぇ」
チッ、と舌打ちをして、抜け殻のようになったラテックスをポイ、と床に投げ捨てる。口のまわりの精液は、無造作にシーツでぬぐい取った。
「やっぱ、生がいちばんいい」
そう言うが早いかサンジは、ゾロの体をベッドに押し倒す。
軽く唇と唇を合わせると、ゾロの大きな手がサンジの頬を包み込んできた。ゆっくりと時間をかけて唇を下ろしていくと、ゾロの口の中に舌をねじ込む。迎えてくれたゾロの舌は、サンジの舌を絡め取り、吸い上げた。ざらついた感触にサンジは喉を鳴らした。少しずつ唾液を流し込んでいくと、舌ごと強く吸い取られそうになり、唇を離した時にはお互いの息があがっていた。
「……挿れてぇんじゃなかったのか?」
はぁ、と息をついて、サンジが尋ねる。
「お預けの時間は終わりなのか?」
片肘をついて身を起こしながらゾロが問う。
「お預けなんて言っても、素直に言うことを聞いたためしもないくせに」
自分の都合でしか抱かないくせにと、言外に含めてサンジは言った。
「そうだったか?」
そ知らぬ顔でゾロは、サンジの体を自分の体の下に敷きこんだ。
筋肉質な体がのしかかってくる重みにサンジは喉を鳴らした。
ゆっくりと、サンジの体の中に待ち望んでいたものが入ってくる。
熱くて、硬くて、大きくて……先走りでドロドロに溶けた、ゾロの性器が入り込んでくる。
「あ……ぅ……」
ヒュッ、と喉が鳴った。呼吸をするのも苦しいぐらいで、サンジは何度も空気を求めて喘いだ。
「苦しいか?」
そう尋ねるものの、ゾロは、サンジのことを心配しているわけではなさそうだ。繋がった部分を焦れったそうに揺さぶりながら、奥へ奥へとねじ込んでくる。
「苦…し……」
何度も息を大きく吸いながら、サンジが呟く。
「大丈夫だ」
何が大丈夫なものかとゾロに言い返そうとして、やめた。今ここで言い返したとしても、ゾロはまともに取り合ってはくれないだろう。この状況では、何を言っても労力の無駄でしかない。かわりにサンジは、片方の足をゾロの腕にひっかけた。
「もっと、深く……」
繋がっている部分をもっとリアルに感じたいと、サンジは思った。
ゾロの腕が動いた。肩の上に担ぎ上げられたふくらはぎの下で、ゾロの筋肉が隆起するのが感じられる。深く結合した部分が、じんわりとと痛い。
「そう、締め付けるな」
不意にゾロが言った。
困ったような顔をして、上からサンジを見おろしている。
「なあ。こん中で、どんな動きをしてるんだ? さっきからきゅうきゅう締め付けてくるぞ」
そう言ってゾロの手が、サンジの腹を撫でた。大きな手はかさついていたが、優しい手つきをしていた。触れられた部分がひくついて、サンジは知らず知らずのうちに尻の筋肉を収縮させていた。 「馬鹿。そういうことは、思ってても口にしねえんだよ、この唐変木」
恥ずかしさをこらえながら、サンジは返した。
腹をなぞるゾロの手つきに、呼吸が乱れてしまう。
「あ……ちょっと待った」
ゾロの手を掴み、サンジは状態を起こそうとする。
「なんだ?」
怪訝そうなゾロに、ちょっと待ってろと言うと、サンジは臍の脇を飾っているボディピアスに手をやった。
「外すのか?」
尋ねられ、サンジは首を横に振った。
「いいや」
言いながらピアスを外すとサンジは、悪戯っぽくゾロに笑いかける。
「これはもう、いらねえ。アンタは目の前にいるからな」
言うが早いか、サンジはピアスを部屋の隅っこに投げ捨てた。ピアスは、カツン、と微かな音を立てて部屋の隅に紛れてしまった。もともと、寂しさを言い訳にあけたものだ。ゾロがいれば、こんなものは必要ないのだ。
清々しい顔つきでサンジは、ゾロを見あげた。
「続き、しようぜ?」
揺さぶられながらサンジは、男の体温を感じていた。
いくら声をあげても今日は構わなかった。あられもない嬌声をあげようが、媚態を晒そうが、何一つとして気にしなくていいここは、まさに天国だ。
「ゾロ……」
掠れた声でサンジが名前を呼ぶと、ゾロの穏やかな瞳が見つめ返してくる。
抉られるような感触がして、サンジは思わず声をあげていた。
幸せで、幸せで、たまらない。痛みも快感も、ゾロに与えられるものすべてが愛しくてたまらない。
あんなにも長い間、離れていたのに。遠く離れて過ごしていた時間など感じさせないほど、今は近くにいる。時間も距離も、離れていたことを感じさせないほどにピタリと密着していると、腹の底から熱い塊がぶわりと膨れあがって、サンジの中から溢れ出しそうになる。
「ゾロ、もっと……」
うわごとのようにサンジは呟いた。
うっとりと目を閉じると、ゾロの突き上げがいっそう激しくなった。
突き上げてくる力と、締め付ける力が反発しあい、混ざり合う。
ポタリと、ゾロの汗がサンジの頬に落ちてきた。
必死になって腰を動かしている男の眉間に皺が寄っているのを目にして、サンジは微かに笑った。
体の中で、ゾロの熱が弾けて、溢れた。
満たされていく感覚に、サンジは幸せな溜息を吐いた。
To be continued
(H21.4.20)
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