『恋はトツゼン! 7』
ゾロのまっすぐな眼差しがじっとサンジを見つめている。
自分の気持ちをどう誤魔化そうかと思案していると、ゾロがにやりと大きく口を歪めて笑った。
「お前……昔と全然変わってねぇな」
そう言われてサンジははっ、と顔を上げた。互いの視線が絡み合う。
「昔、って……知ってたのか、お前……」
放心したようにサンジがぽそりと呟くと、ゾロは鷹揚に頷いた。
「途中からだけどな。お前のその、ポーカーフェイスになりきれてねぇ困ったような顔で思い出したんだよ」
にまにまとゾロは笑っている。
途端、サンジは恥ずかしいやら悔しいやら、何か言わなければと口を開いたものの、いつもの威勢のいい罵声が出てこず……。
蹴り倒してやろうかと思ったのも束の間のことで、この体勢からでは少々無理がある。サンジはすかさずゾロの胸ぐらを掴み上げていた。
「気付いてたんならさっさと言えよ、クソ野郎!」
怒鳴りつけるなりサンジは、ゾロの額に頭突きを喰らわす。
ゴッ、と鈍い音が二回、響いた。
「っ……──」
サンジに押し倒されるような形でのしかかられたゾロは、眉をひそめて天井を見上げている。額にサンジの頭突きを喰らい、押し倒された時の勢いでさらに床に後頭部をぶつけた衝撃とが、耳の奥で警鐘のように鳴り響いていた。
「……石頭」
ぽそりと呟くと、鬱陶しそうにサンジの身体を退けようとする。
「思い出していたのなら、なんでさっさと言わなかった」
詰問するように、サンジは言った。
気の強そうなところも、気の短いところもあの時のままだと、ゾロはこっそりと苦笑した。
「お前が気付くのを待ってたんだよ」
ゾロが口元だけでにやりと笑うと、サンジは再びゾロの胸ぐらを掴み上げてきた。
「おい、ちょっと待て……」
ゾロが言いかけたところに、サンジの顔が迫ってくる。あの頭突きをもう一発喰らわなければならないのかと諦め気分で目を閉じた瞬間、生暖かいものにゾロの唇は塞がれた。
「ん……?」
ちらりと薄目を開けると、サンジの顔が目の前にあった。
ひそめた眉間がやけに真剣で、ゾロは淡く微笑んだ。それから目を閉じると、サンジの貪るような唇を味わった。
「ん……ぅ……」
サンジの唇が、焦れったげに肉薄のゾロの唇を甘噛みする。
どうして自分は男に押し倒されているのだろうかと思いながらもゾロは、そのほっそりとした、しかし間違いなく男のものである骨張った背をそっと抱きしめる。
夢中になってゾロの唇を吸っているサンジの唇を舌で軽くつつくと、わずかに口が開いた。
すかさず舌をねじ込むと、待ち侘びていたかのようにサンジの舌が絡みついてくる。
互いに舌を吸い上げ、歯の裏側に舌を這わせるだけで身体が熱くなっていくのがわかる。身体の中心へと、抑えきれない熱が集まっていく。
「……女は抱かない主義なんだろ」
唇が離れた一瞬、サンジが尋ねかけてきた。
「ああ?」
上体を起こしながらゾロは、サンジの顔をまじまじと見つめ返す。
サンジは鼻先で微かに笑った。
「本当かどうか、俺が試してやる。俺が、お前の妨げになるかどうか、この目でしっかりと見てやるよ」
サンジが再びくちづけてきた。
勢いよくサンジに飛びつかれ、ゾロはまた、後頭部をしたたかに打ち付けた。打った瞬間、ガッ、と鈍い音がした。ゾロの身体の中心へと集まってきていた血が四散していくのが感じられる。
「……妨げも何も、お前は男だろ」
ぽそりと呟いたゾロのシャツをたくし上げながら、サンジはにやにやと笑っている。
「だから、試してやる、って言ってんだろう。お前がインポじゃないのかどうか確かめてやる、って言ってるんだ。ありがたく思え」
そう言うなり、いつの間に脱がしたのか、サンジはゾロのペニスをすっぽりと口に含んだ。サンジが頬を窄めて強く吸うと、ペニスは硬度を増していく。
ハードキャンディを舐める子供のように、サンジは夢中でペニスをしゃぶり続けた。
先走りの苦い汁が舌の上を転がり、唾液と混ざり合って唇の端を伝い落ちても、サンジは口を離そうとはしない。むっとするような青臭い精液のにおいと、かすかな小便のにおいとが重苦い味となってサンジの口の中を満たしていく。
「おい、はなせよ。風呂も入ってねぇのに……」
上擦った声でゾロが言う。
つい、と顔を上げるとサンジは尋ねた。
「なぁ、お前……セックスは初めてなのか?」
不意打ちのように尋ねられて、ゾロは大きくむせ込んだ。
「なっ……ななな……なに言い出すんだ、急に!」
慣れてもいないが、初めてというわけでもなさそうなゾロの様子に、サンジは何とはなしにほっとした。小さく息を吐くと、再びゾロのペニスに舌を這わせる。カリの部分に沿って輪郭を舌先でゆっくりとなぞり上げると、ピクピクとペニスが跳ねる。その部分だけがゾロから独立しているかのような動きに、サンジは面白くて何度も舌で触れてみる。
「おい……そろそろ……」
ゾロが何か言いかけた。
サンジが知らん顔を続けていると、不意に髪を掴まれた。勢いよく引っ張られ、床の上に転がされる。
「お前、精液飲まされたいのか?」
どこか怒ったようなゾロの口調に、サンジは苦笑する。
「他の奴のは飲みたくない。だけど……アンタのなら、飲んでみてもいいかもしれないな」
その言葉にゾロは呆れたのか、微かに顔をしかめただけだった。
いつの間にか二人は、床の上で互いのペニスを舐め合っていた。
サンジは甘いものを欲しがる子供のようにゾロのペニスに執着していた。ゾロは仕方なく身体をずらすと、サンジの下腹部へと舌を這わせることにした。そうしていれば、文句を言うこともなく、サンジはおとなしくしている。ゾロのペニスに歯を立てたり尻のあたりをつねったりすることもない。
体勢を入れ替えたゾロは四つん這いになると、サンジの尻を両手でくい、と開いた。程良く筋肉の引き締まった双丘の奥には、ほの暗い孔が潜んでいる。躊躇うこともなくゾロはそこへ舌を這わせた。
to be continued
(H15.10.11)
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