『恋はトツゼン! 8』



  サンジの中は驚くほど滑らかで、柔らかかった。
  ゾロのひとさし指は第一関節までするりと飲み込まれ、たちまちのうちにぎゅうぎゅうと締め付けられた。
「…あっ……」
  サンジの口の動きが止まる。
「んっ……ぁ……」
  内壁をぐい、と指の腹で押し返すと、前立腺の裏にあたったらしい。ビクン、とサンジの身体が大きく跳ね上がり、痙攣したかのようにゾロの指を締め付けてきた。
「はっ……ぁあ……ああ!」
  だらしなく股を広げた格好のまま、ゾロの指の動きに合わせてサンジの膝がカクカクと揺れている。
  口の中のサンジのペニスが、何もしていないのに固さを増した。ただ苦いだけではない精液がゾロの口の中に広がっていく。
「あっ、ぁ……もう、やめ…ろ……」
  今にも啜り泣きだしそうな弱々しい声で、サンジが言った。
  収縮を繰り返す後孔からゾロが指を抜き取ると、ぐちゅり、と音がした。
「おい、ラテックス使うか?」
  息を荒げて畳の上に転がっているサンジに声をかけると、ギロリと睨み付けられた。
「いらねぇよ、ンなもん。さっさと……挿れろ」
  サンジの眼差しが、指先が、全身がゾロを呼んでいる。求めている。
  ゾロはそれ以上は何も言わず、サンジの腰をがしりと両手で掴んで固定した。



  サンジの後孔にペニスをあてがうと、ゾロは少しきつめに孔の周囲を押してみた。先端に溜まっていた精液が潤滑油となってぐちゅぐちゅと音を立てる。
  畳の上に肘をついたサンジは、熱っぽく潤んだ眼差しでゾロのペニスをじっと眺めていた。
「く……ぁ……」
  眉間に皺を寄せたサンジの瞳は、酷く艶めかしい。物欲しそうな唇からわずかに覗く赤い舌は、それだけで卑猥な印象を与える。
  ゆっくりと、ゾロはペニスを挿入した。
  ずず、と先端が入り込むと、すぐさまサンジの肉襞がまとわりついてくる。包み込み、飲み込んでいく襞は、酷く熱い。
  いちど奥までゆっくりと竿を入れてしまうと、ゾロは動きを止めた。
「おい、苦しいか?」
  声をかけると、にやりと笑って返された。
「……痛てぇ」
  ゆがんだ口元は、どこか自嘲気味だ。
「──…胸が、痛てぇ。アンタを見てると、俺のここんところが……」
  と、サンジは自分の心臓のあたりを親指を突きだし指してみせた。
「クソ痛てぇんだ。キリキリしてくる。いけ好かない奴だとばかり思っていた、ってのに、なんでだ?」
  真剣な眼差しで見つめられて、ゾロはどう返したらいいのかわからなくなった。言葉が出てこない。もやもやとした中途半端な思いだけが、ゾロの胸の中に存在している。自分はもしかしたら、サンジほどの真摯な気持ちは持っていないかもしれない。
  それでも。
  ゾロはその考えを払拭するかのようにただ黙ってサンジの唇を深く吸ったのだった。



  事が終わると、サンジはしばらくぐったりとしていた。
  いつの間にか出血していたらしい。畳の上に乾きかけた赤黒いものが点々と染みになっていることに気付いたゾロは、黙って部屋を出ていく。
  戻ってきた時には金だらいと手拭い、それに濡れ雑巾を持っていた。
  ゾロは何も言わず、濡れ雑巾で畳を拭いていく。ゾロの手慣れた様子を、サンジは黙って見ていた。
  畳を拭き終わるとゾロは、雑巾を持っていったん表へ出た。それからまた部屋に上がってくると、今度はたらいに手を伸ばした。雑巾は持っていなかった。
  手拭いをたらいにつけ、固く絞る。サンジのほうを向くと、無表情のまま四つん這いになるようにゾロは言った。
「はあ? なんで俺が四つん這いにならなきゃなんねぇ?」
  そう言った瞬間、ゾロの大きな手がサンジの足首を鷲掴みにした。
  ずるずると畳の上を引きずられ、慌ててサンジは身体を捩る。右肩のあたりが畳に擦れた時の摩擦熱でヒリヒリする。
「ばっ……馬鹿野郎! ナニしやがる!」
  慌ててサンジが足を繰り出した。
  ガッ、と鈍い音がする。足の裏に生暖かい感触がして、サンジは咄嗟に閉じた目をおそるおそる開けた。
「──……お前なぁ。俺がせっかく親切に後始末してやろうとしている、ってのに、足蹴にするのか、ああ?」
  顔面に入ったサンジの蹴りに、ゾロは渋い顔をして言う。
「あ……悪りぃ」
  力無くへへッ、と笑ってサンジは誤魔化そうとした。後始末をしなければならないことはわかっていたが、まさか人にしてもらう羽目になろうとは思ってもいなかった。相手がゾロなら、なおさらだ。
「ほれ、どうせ体力切れで身動きできないんだろ?」
  言いながらゾロは、嫌々ながらサンジが四つん這いになるのを手伝ってやる。膝がカクン、となって今にも床に延びてしまいそうなところを無理に這いつくばらせると、パン、とサンジの尻を軽く叩いた。
「中に残ってるの、掻き出してやるよ」



  身体の中に入り込んでくる指の感触に、サンジは眉をひそめた。
  後孔から入り込み、我が物顔で動き回る異物感は決して気持ちのいいものではない。しかし同じことを一人でやれと言われても、今の自分にはできるかどうか自信がない。
  唇をぎりりと噛み締め、サンジは四肢に力を込める。気を抜くと、今にも手足の力が抜けて畳の上にへたり込んでしまいそうだ。
「ぅ……んっ……」
  くちゅくちゅと湿った音がしている。
  奥のほうに残っている精液を、ゾロの無骨な太い指が掻き出してくる。たらり、と溢れ出した精液が太股を伝う不快感にも、サンジは声をあげてしまった。少し鼻にかかったような、妙な声だ。
「馬鹿か、お前は。おっ勃ててんじゃねぇよ」
  不意にゾロが、あいているほうの手をサンジの前に回した。
「なっ……?」
  ぐに、と掴まれたペニスはいつの間にかサンジの意志に反して勃起し始めていた。ゾロの指に触れられ、なぞりあげられただけで固く反り返っていく。
「もうちょっとで全部掻き出せそうだから、我慢しろ」
  耳元で囁かれ、サンジは頷くかわりにカクカクとなる肘に力を入れた。






to be continued
(H15.10.22)



ZS ROOM

                                             10

11     12     13     14     15     16     17     18     19     20